次表を見ても分かる通り、2000年代で前述した3つのジャンル以外の劇場アニメ(つまりオリジナル劇場アニメ企画作品)で興行収入が10億円を超えたのはわずか8作品しかない。
年度 | タイトル | 配給 | 興行収入 |
---|---|---|---|
2001年 | ファイナルファンタジー | ギャガ=ヒューマックス | 10億円 |
2004年 | イノセンス | 東宝 | 10億円 |
2004年 | スチームボーイ STEAMBOY | 東宝 | 11億6000万円 |
2005年 | あらしのよるに | 東宝 | 18億8000万円 |
2006年 | ブレイブ・ストーリー | ワーナー | 20億円 |
2006年 | 劇場版 どうぶつの森 | 東宝 | 17億円 |
2009年 | サマーウォーズ | ワーナー | 16億5000万円 |
2011年 | friends もののけ島のナキ | 東宝 | 15億円 |
これらの作品を見ると、次のことが言えるかと思う。
1.テレビアニメの劇場版、スタジオジブリ作品といったブランドタイトル以外のオリジナル企画の劇場アニメがヒットするのは極めて困難
2.アニメファン向け、クールアニメは10億円が限界
こういった傾向の中、『サマーウォーズ』の細田監督が評価されたのは、アニメファン向けだけではない、幅広い層に対してアピールできるエンタテインメント性、スタジオジブリのようにオリジナルストーリーを創造できる作家性、まだ44歳という若さが持つ可能性であった(宮崎駿監督が初のオリジナルストーリー作品である『風の谷のナウシカ』を作ったのは43歳の時)。
事実、『サマーウォーズ』以降、アニメ業界の中で細田監督に対する期待感が非常に強くなったのである。
細田監督の持つ能力もさることながら、今回の『おおかみこどもの雨と雪』にはブレイクを予感させる大きな要素がある。それは「日本テレビ×東宝」というビジネス体制だ。日本テレビは『時をかける少女』からだが、今回は日本で圧倒的な配給パワーを持つ東宝が参入した。
実はこの体制はスタジオジブリと同じである。つまり、日本の歴代興行収入の上位を独占してきた体験を持つビジネス陣なのである。従って、次図の細田監督の興行収入推移にもあるように、今回は大きな数字が期待される理由が十分あるのだ。
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