製造業もサービスを売れ! 4つの方向性を考える(1/3 ページ)

» 2012年05月30日 08時00分 公開
[松井拓己,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:松井拓己(まつい・たくみ)

ワクコンサルティング株式会社執行役員・チーフコンサルタント。名古屋工業大学産業戦略工学専攻修了後、大手化学工業品メーカーで商品企画開発に従事。その後、事業開発プロジェクトのプロジェクトリーダーとして、問題分析手法を活用した業務改革テーマの創出や、サービスサイエンスを取り入れた新規事業戦略立案に貢献。現在はサービスサイエンスおよび新規事業開発を中心に支援を行っている。


 近年、製造業で注目されているキーワードを見ると、製造業においてもサービスの重要性が高まっていることが分かります。

 「モノからコトへ」「モノ売りからソリューション売りへ」「製造業のサービス化」。これらのキーワードにはさまざまな解釈があると思いますが、単にモノを作って販売するのではなく、お客さんの期待に応える経験・解決策・サービスに仕立てて提供する必要があるということを指しているかと思います。製造業において、サービスというキーワードは、もはや無視できない存在になってきているのではないでしょうか。

 製造業において特に早くからサービスに注力している組織があります。それは、製品販売後のアフターサービス部門に当たる保守サービス部門や、製品販売前のビフォアサービスとも言える営業部門、さらには定常的に発生するお客さんからの問い合わせに対応するコンタクトセンター部門ではないでしょうか。

 こういった部門ではお客さんに満足してもらい、受注やリピート購入をしてもらうためのサービス設計に早くから取り組んできています。しかし、会社全体やビジネスモデル全体からみると、まだまだ部分的な取り組みで、サービスが事業に大きく貢献するという視点での取り組みができている企業は少ないようです。

 そこでサービスが製造業において、いかに事業に貢献できるのか、4つの方向性を見てみたいと思います。

1.サービスで事業を収益化する。

 製造業において、例えば保守・メンテナンスといったアフターサービスは「無料」「おまけ」「面倒な業務」としかとらえていない企業が多いようです。本当にそれで良いのでしょうか? 少し考えてみてください。

 お客さんは、製品を購入した後にはある程度の期間、製品を使い続けてくれます。このお客さんに対しては、保守・メンテナンスサービスの提供機会は定期的かつ安定的にあると言えます。これは、変化の激しい経済環境下で、いつも製品を新規のお客さんに販売し続けることと比べれば、極めて安定したビジネスになります。さらには、追加の営業もほとんどかけることなくアフターサービスを購入してもらえるため、利益率が製品販売に比べて高いという魅力もあります。

 このように、製品販売以外のサービスを収益化することで、事業をストックビジネス化している企業が増えてきています。

2.サービスで製品を差別化する。

 近年、製品のライフサイクルがますます短くなっており、新製品をいち早く市場投入しても、あっという間に競合企業にキャッチアップされて、同様の製品が市場にあふれてしまうようになりました。このようなコモディティ製品においては、もはや機能で差別化できなくなってしまい、過当な価格競争に巻き込まれてしまうことになります。そこで注目されているのが、「サービスでの差別化」です。

 よく挙げられる例ですが、アップルのiPodが爆発的に売れたのは、製品自体の機能性にも増して、音楽をダウンロードしたりプレイリストを編集したりできるiTunesのサービスに価値があったからではないでしょうか。これはまさに、iPodという製品をiTunesというサービスで差別化した良い事例だと思います。

 また、例えば産業機械メーカーの場合、装置の性能を向上させることも重要ですが、装置の故障に365日24時間いつでも即座に対応するアフターサービスを整えて、営業時間内しか対応できない他社に対して、サービスで差別化することも可能だと思います。製造業の競争の選択肢の1つとして、サービスで勝つことを考える価値は大いにあると思います。

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