コラム
» 2012年05月29日 08時01分 UPDATE

窪田順生の時事日想:なぜマスコミはインチキをしても「ごめんなさい」と言わないのか (1/3)

普通の企業ならば謝罪会見モノの不祥事が発覚しても、しれっとした顔でやり過ごしている業界がある。言わずと知れた、マスコミだ。なぜ彼らは意地でも頭を下げないのか。そこには一般人にははかりしれぬ“美学”があったのだ。

[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 以前、このコーナーで、福島第一原発から避難してきた作業員と家族が放射線検査でパニック状態になっていた映像をテレビ局がお蔵入りにした、という話をしたら、読んだ方たちから反響があった(NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由)。

 「マスコミの常識は、世間の非常識」を象徴するようなエピソードだが、そういう非常識な世界で生きてきた人間からすると、この手のネタは言い始めたらキリがない。

 例えば、昨年3月18日、東電幹部から「手遅れかもしれないが、事実なので報じて欲しい」ということで情報提供を受けた。

 なぜ彼が口を開いたかといえば、その前日、NHKなどで「福島 除染が必要な被災者なし」という報道があり、「さすがに黙っていられない」と憤りを感じたことがきっかけだった。

 内容は簡単に言うと、内部被ばくの危険性だ。彼が言うには、当時、地方自治体がおこなっていたスクリーニングはザルで、原発周辺から逃げてきた方たちが放射性物質を身体に付着させたまま日本全国を移動することで、それを吸い込んだ方たちが内部被ばくする恐れがあるというものだった。

 この経緯は『原発の深い闇』(宝島社)という本で紹介したが、マスコミが彼の告発を取り上げることはなかった。

yd_kubota1.jpg
yd_kubota2.jpg 東電幹部の告発書の一部

 彼は私だけではなく、テレビ、新聞などのマスコミ記者にこの話を持ち込んだが、最初は身を乗り出して聞いていた者も、しばらくすると暗い顔でこんな弱音を口にしたという。

 「上にかけあいましたが、ダメでした。そんな話を報じたら放射能差別だって苦情が殺到するって」

 おいおい、報道機関のくせに、そんなに苦情が怖いのかとあきれるかもしれないが、彼らは怖がっている。報道は組織が大きくなればなるほど、視聴者や読者からの苦情を意識して、なにも言えなくなくなるのだ。

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