「抑える」そして「伸ばす」――部下を育成するポイント部下育成の教科書(7)(3/4 ページ)

» 2012年05月04日 00時00分 公開
[Business Media 誠]

出口のサイン

 新たな段階で仕事をすることが板についてきた、この段階で何とかやっていけそうだという感覚や心情の自覚を指します。

トランジションの出口のサインの例

(1)スターター(Starter)へのトランジション

  • 素直に自分の思ったことを発言できるようになる
  • 「お客様のために」と言うことに、気恥ずかしさを覚えなくなる

(2)プレイヤー(Player)へのトランジション

  • 言われたままやるだけでなく、自分の意見も混ぜながら仕事を進められるようになる ・自分で解決できなくても、誰に聞けばいいかが分かってくる

(3)メインプレイヤー(Main Player)へのトランジション

  • 担当分野について自分なりの考えを持ち、いろいろな角度から語れるようになる
  • 関係者の相手の反応が予測できるようになり、それを見越して行動できるようになる

(4)リーディングプレイヤー(Leading Player)へのトランジション

  • 自分のことだけでなく、職場の他のメンバーや組織の業績に関心が向くようになる
  • 指導している後輩の成長を感じたり、後輩がよい評価をされたことを嬉しく思うようになる

  核心となる意識や行動のうちいくつかが身についてくると、何かのきっかけで、新たな段階で仕事をすることについて、ふと「板についてきた」という感覚を得るときがくるでしょう。うまくやれているという感覚にはまだ程遠いかもしれませんが、「何とかこの段階でやっていけそうだな」という気持ちになるのです。これがトランジションの出口のサインです。

 非常に感覚的なものですから、新たな段階で具体的な成果が上がるようになったかと言うと、そこまでは至っていないことが多いです。しかし、本人の気持ちはそれまでと大違いです。試行錯誤の中から一筋の光が見えた、うまくいかないことが続いたが何かコツがつかめてきた……安堵感とともに、新たな段階の仕事が「大変なもの」から「面白いもの」へと変わっていく時期でもあるのです。 

 出口のサインは、何かのきっかけでふと気づくものです。初めはなかなかうまくいかなかったことも、意識して何度も繰り返し行っているうちに、あるときふと以前よりできるようになっている自分に気づくでしょう。以前と何か違うな、と自分自身で気づくこともあれば、自分が協働している関係者の反応や言動が変わったり、実際にその相手から言われて自分の変化に気づくこともあります。

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