震災とタブレットが変えるメディアの未来遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(3/4 ページ)

» 2012年05月02日 08時00分 公開
[遠藤諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

日本はまだイス取りゲームの外側にいる?

 もう1点は、今起きているメディアの変化において、日本ではまだ小さな変化なので見落とされがちなタブレットの動きだ。2010年4月のiPad発売時には、テレビやビジネス誌が大きく取り上げたが、今「タブレットが売れまくっている」という話はあまり聞かない。IDC Japanによれば、2011年の国内の出荷数は225万台だったという。

2010年から2011年にかけてのデバイスの変化

 ところが、世界市場では、タブレットは大きく動いているのだ。米IDCによれば、スマートフォンの世界市場の2011年の出荷台数は、対前年62%増の4億9400万台。PCも、ここ数年は成長市場に支えられ3億5300万台にまで達している(2011年はスマートフォンがPCを軽く追い越した年だったわけだ)。これらに対して、タブレットの出荷台数は6870万台に達している(シェア的には、54.7%がiOSで、残りをAndroid系が分け合っている)。

 米Gartnerは、2012年に世界中でタブレットが1億2000万台出荷されると予想しているという。これは、同社のデータによる2001年のPCの世界での総出荷台数1億2800万台と比べてみると興味深い。彼らは、タブレットは今年、今からおよそ10年ほど前のPCくらいの存在になると予想しているわけだ。

香港動漫電玩節

 2011年夏、「香港動漫電玩節」(Ani-com=ACGHK 2011)というイベントに出かけたら、会場で知り合いに声をかけられた。台湾のオンラインゲーム会社「Gamania」の子会社のブースで、iPadなどのタブレットでのマンガ配信事業をするという。まだ作品を募集しているような状態だが、マンガの想定読者層でもある会員を抱えており、ポイントシステムも持っている。「何よりタブレットが来ているじゃないか」と言われて、私は「えっ?」と思った。

 正直言って、私もタブレットが来ているという実感を持っていなかった。しかし、2011年11月に米Amazonが「Kindle Fire」を発売し、3カ月で米英で600万台を売ったという話題もあるなど、いよいよ勢いを増している。米国では2011年1月の段階で、成人の19%がタブレットを、25%がタブレットまたは電子書籍リーダーを所有しているというデータもある。

Copyright© ASCII MEDIA WORKS. All rights reserved.