なぜ駅にホームドアの設置が進まないのか杉山淳一の時事日想(4/5 ページ)

» 2012年03月16日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 このほかの理由として「車掌による乗降状況の確認に支障がある」「設置コスト」がある。実は、列車によって扉の位置が異なる場合にも対応するホームドアは開発されている。和室のふすまのごとく、扉と柵がホーム上のレールの上を自在に動く方式だ。しかしこれはお金がかかりすぎる。

 これらの問題点、主に費用対効果だろう――を考慮したと思われるが、国土交通省は2009年に「1日の利用者が5000人を超える駅にホームドアを設置することを義務化しよう」という方針を掲げた。そして現在、鉄道事業者の担当者を集めて「ホームドアの整備促進等に関する検討会」を実施している。

もっとも費用対効果の高い「声かけ」が後回しになっている

内方線付き点字ブロック(出典:JR東日本)

 国土交通省の「ホームドアの整備促進等に関する検討会」は、2011年8月に「中間とりまとめ」(参照リンク、PDF)を発表した。これを要約すると、ホーム転落事故対策をする駅の優先順位は、「駅周辺に目の不自由な人の関連施設が存在するなど、整備要望が多い駅」「利用者数1万人以上の駅」とし、さらに「利用者数10万人以上の駅」は急務とする方針のようだ。

 また、利用者10万人以上の駅について。車両扉位置が一定な駅はホームドア設置を優先。それ以外の駅も5年以内に「内方線付き点字ブロック」を設置する。また、ホームドアが困難な場合は、音声や光による列車接近警報や人的介助策を実施する。利用者1万人以上の駅については、「内方線付き点字ブロック」を速やかに設置するとしている。「内方線付き点状ブロック」とは、4辺のひとつにタテの線を入れた新型の点字ブロックだ。ホームの内側と外側が判別しやすいという。

 これらの取り組みはすでに始められている。東京メトロの2011年11月のプレスリリースによると「全179駅中77駅の整備が完了し、設置率は約43%」とのこと。JR東日本では京浜東北線と山手線で車両の扉を4つに統一し、6扉車を廃止した。これはホームドアの導入準備である。

 中間とりまとめでは、次に「心のバリアフリーに関するソフト施策」が掲げられた。これは「鉄道係員に対するバリアフリー教育、研修等の人的対応の充実」「旅客による視覚障害者への声がけやマナー、旅客のホームでの安全に関する教育啓発の強化」の2つが柱になっている。

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