なぜ駅にホームドアの設置が進まないのか杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)

» 2012年03月16日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 また、路線別の例を挙げると「人身事故マップ」には、東京メトロ南北線、つくばエクスプレス、埼玉高速鉄道、日暮里舎人ライナー、ゆりかもめ、あおなみ線、京都市交通局東西線、福岡市交通局七隈線などの人身事故データはない。これらはすべて、開業時または早期からホームドアが設置された路線である。

 もっとも、ホームドアがあれば事故は皆無というわけではない。ホームドア設置駅でもわずかながら飛び込み自殺はある。ホームドアは、死にたいという強い意志があれば越えられる壁だ。しかし「人身事故マップ」を見ると、ホームドア設置駅の事故はとても少ない。自殺に対しても抑止力になっているとみられる。

なぜホームドア設置が進まないのか

 これほどまでにホームドアが有効だというのに、なぜ設置が進まないのか。国土交通省は2002年に「鉄道の安全対策」という文書を発表した。その中の「ホームの安全対策」に「ホーム柵」の設置が進まない理由が示され、検討課題としている。「ホーム柵」はホームドア(可動柵)と、列車のドア部分以外に設置する柵(固定柵)を合わせた呼称である。

国土交通省発表「ホームドアの設置状況」(PDF)から

 理由の筆頭は「列車によって位置や数が違う路線がある」。特急列車の扉は2つか1つ。通勤電車は3つか4つ。扉の位置が異なれば、ホームドアの位置も決められない。

 次に「混雑する路線では、ホームドアによってホームが狭くなる」。混雑してホームが狭いからこそホームドアが必要なはずだが、実は狭いホームで利用客が多い場合、階段の幅を広くとっているため、ホームドアを設置すると階段に干渉してしまう。

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