連載
» 2012年03月01日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:衰退する音楽産業、ハードへの投資でもう一度ブームを (1/3)

音楽市場が縮小する中、一人勝ちしているAppleのiTunes。しかし、iTunesを通してのみ音楽を聴くというスタイルの広まりは、音楽の楽しみを圧縮させているのではないかと筆者は主張する。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 音楽産業ブームはもう来ないのだろうか?

 統計を見ると、CD生産額は過去5年で4割以上減少、CD販売店はほぼ半減、CDレンタル店もジリ貧が続く。大ヒットがあっても“女子団体舞踊”くらいなので、大多数の音楽家はもうかっていない。

 ネット配信はどうか。成長市場のはずなのに、日本では著作権問題で配信が進まず、2009年をピークに減少。YouTubeやネットラジオ、音楽シェアで聴くスタイルが定着したせいもある。それにしてもみんなが消費する市場なのに、この衰退ぶりにはため息が出る。

ah_zuhyou01.jpg

 好調なのは発売後10年で3億台を突破したiPodと、通算100億曲以上のダウンロードを達成したiTunes Storeを擁するAppleだけとは……。

 かく言う私自身、iPodさえ眠らせて、iPhoneで音楽を聴くようになってもう3年以上。曲のバラ買いは嫌いだったのにいつの間にかしているし……まさにiTunesの奴隷となってしまった。

ニール・ヤングが吠えた!

 iTunes全盛の世の中だが、音楽家から「iTunesの音質を何とかしてほしい」という声も聞こえる。つい先ごろも、シンガーソングライターのニール・ヤングが吠えた。2012年1月末、『D: Dive Into Media Conference』で彼はこんな発言をした。

 「僕は自分が過去50年やってきたアートの形を救いたい。我々はデジタル時代に生きているが、残念なことにそれは音楽をむしろ悪化させている」

 ダウンロードはお手軽だが音質がひどい。iTunesのビットレートは平均256kbps AACで、オリジナル音源に比べて劣る。「iPodの開発をリードした故スティーブ・ジョブズだってレコードを聴いていたんだぜ」と語ったヤングは、こう付け加えた。

 「デジタルが悪いとか劣るんじゃない。今のデジタルが音楽というアートに正しいことをしているかどうかだ。デジタルでは“便利を取るか品質を取るか”になってしまったが、そんな選択じゃないはずだ」

 もっと良質のデジタル形式を普及させて、iTunesでも良い音で聴く。それはいい。だが、私はこの問題はもっと根が深いと感じる。デジタル時代になり、みんな同じ場所(電車や路上)、同じ用具(スマホや白いイヤフォン)で聴く。音楽スタイルまでも“圧縮された”のではないか。それが音楽市場を一層退潮させているのではないか。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

注目のテーマ