衰退する音楽産業、ハードへの投資でもう一度ブームを郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2012年03月01日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

ラジカセ、そしてメーカーが輝いていた時代

 その思いが強まったのは、渋谷区神南にある中古ラジカセ専門店「Dubby MAD sound shop(ダビーマッドサウンドショップ)」を訪れたから。このお店には単なるノスタルジーではない、個性ある音楽スタイルがある。

 店内には、再生・録音できる状態に整備した1970〜80年代のラジカセがずらり。どれもクオリティが高い。

「Dubby MAD sound shop」(東京都渋谷区神南1-14-1 コーポナポリ2F)のオーナーの浅田健治さん

 「中学生のころ、最初に買ったラジカセだ!」と私が飛びついたのはソニー『CF-1980』(1974年発売)。当時70万台を売ったベストセラーを前に、「重低音が響きましたねえ」と店のオーナーの浅田健治さんと語り合った。彼の実家にも同機種があったそうだ。彼のもう1つの原体験はパイオニア『SK-900』(1981年)。4つの巨大スピーカーがド迫力。

ソニー『CF-1980』
パイオニア『SK-900』

 CD全盛でMDも出現した1990年代、なぜか浅田さんはラジカセへの想いがフツフツとわいてきて、中古品の収集を始めた。中古探しや修理者探しをするうち、“ラジカセにはラジカセの世界がある”ことに気付いた。それがこうじて2008年にお店をオープン。ラジカセ好きは世の中にまだゴマンといる。

 話をうかがっている最中も、持ち込みあり、法人問い合わせあり(ドラマや映画、CM制作、各種撮影やプロモーションで使用)。アナログ感たっぷりのラジカセ、整備品の販売価格は3万円台から(未整備品はもっと安いものあり)。

 しかし、こんなに個性あふれるパイオニア製品……失礼だが今の製品からは想像できない。いや、シャープもサンヨーもナショナル(当時)もビクターも、もちろんソニーもみんな輝いていた。個性あふれる機種をどんどん世に送り出していた。だから音楽も機器も市場が拡大していた。

 デジタル化、小型化と引き換えに失った何か、浅田さんと話すうちにそれが見えてきた。

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