リアルに「リアルウコン」のマーケティング戦略を聞いてきたそれゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

» 2012年02月29日 08時00分 公開
[金森努,GLOBIS.JP]
前のページへ 1|2       

リアルウコンの4P(製品・価格・販売チャネル・プロモーション)

手に取ってもらうための製品価値

 ウコン飲料の中核的価値は前述の通り、「二日酔い防止」であり、「翌日に残さない」である。それを実現する実体価値として新たに「おいしさ」という価値を加えた。

 さらに、従来のウコン飲料が持っていなかった、消費者にとって、さらにうれしい付随機能としてお酒を分解する成分として知られる「アラニン」を加えた。アラニンはしじみに含まれている健康成分で、専用のサプリメントや健康飲料も多く発売されている。それらの製品1回分の容量と同等の成分を加えたのである。おいしさ+さらなる健康成分がリアルウコンの強力な製品価値なのである。

手に取りやすい価格

 先行商品のコンビニでの希望小売価格は1本198円。それをリアルウコンは10円下げた188円というプライシングをした。たかが10円、されど10円である。

 リアルウコンが狙うのは、従来のウコン飲料に手を出していない人である。手に取りやすい価格を設定することは極めて重要なのだ。ターゲットとの整合を図った価格設定である。

自販機チャネルの活用

 日本には清涼飲料の自動販売機が約250万台ある。そのうち約100万台がコカ・コーラの自販機である。自販機は日本コカ・コーラの力の源泉であり、その販売チャネルを活用しない手はない。ゆえに、主戦場であるコンビニ以外に自販機でもリアルウコンを販売している。

 だからといって、すべての自販機に入れることは効率的ではない。1つの商品を入れるということは、ほかの商品を外すことを意味しているからだ。そこで、オフィスに設置されている自販機を狙った。商品特性から考えて、街のあちこちにある自販機で偶然見つけて飲むものではない。明らかな目的を持って、飲みに行く前や疲れた時に買われるという消費者行動との整合性を図っているのである。

「体験」と「場作り」を図るプロモーション

 CMのセレブレティーは酒類商品のイメージが強くない、浅野忠信が起用された。そんな彼に、「ウコンは苦手」と明言させ、「うまい」と言わせる。明確にターゲットにパーセプションチェンジさせるメッセージである。

REALウコンTVCM CM出演本番篇 公開

 認知を取りつつ、一方で最大の課題を今まで手に取っていなかった多くの消費者に対する「体験」を創出することに置いた。50万本のサンプリングである。「おいしいというメッセージが浸透した後に、それを実感させることができればリピートは取れる」という狙いからだ。場所は料飲店、カラオケ店、そして新橋SL広場などの街頭である。

 もう1つの課題はサンプルをもらったり、自分で買ったりしたユーザーから体験談を引き出す「場作り」である。2011年末にTwitterでリアルウコンアカウントを取得し、1カ月で5000人のフォロワーを獲得した。メーカーは薬事法の規制によって効果効能を言えない。しかし、ユーザーからは「おいしかった」という味の感想だけでなく、「次の日、身体が楽だった」などの体験の声も集まった。

リアルウコンのマーケティングマネジメント

 前述の通り、リアルウコンのマーケティングマネジメントは理想的な流れができていることが分かる。競合と取り合うのではなく、独自のターゲットを設定し、そのターゲットに刺さるポジショニングを作り出し、製品・価格・販売チャネル・プロモーションのいわゆる4Pもターゲット、ポジショニングとの整合性を図っているのだ。

 その効果があって、現在リアルウコンは販売目標数を超える売れ行きを続けているという。今後の課題としては、さらなるターゲット拡大を目指し女性層の取り組みにも注力するという。

 どのようにリアルウコンがマーケティングマネジメントを強化していくのか、今後も注目に値すると言えるだろう。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。Facebookでもいろいろ発言しています。


関連キーワード

マーケティング


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.