では、何が若者とクルマとの距離を遠ざけているのか。
単刀直入にいえば、コストである。新成人をはじめとする今の若者たちは、団塊の世代からバブル世代までの中高年層と異なり、経済的に将来への希望や期待が持ちにくい環境下にある。自分たちの可処分所得が着実に上がっていくという見通しが立たず、一方で、高齢者増による負担を押しつけられる。コスト感覚が堅実になって当然だ。クルマに興味・関心はあっても、かつての世代のように前のめりでお金はかけられないのだ。
新成人にとって、クルマにかけられるお金はどのくらいだろうか。
まず、クルマの購入予算は「100万円以内」と考える人が最も多く64.7%という結果になっている。新車購入だと軽自動車やベーシックカーの最多販売価格帯が140~180万円前後なのでやや厳しい予算だが、中古車まで視野に入れれば、100万円前後で買えるクルマはそこそこある。最近の商品・サービスがデフレ傾向にあることを鑑みれば、100万円くらいまで出すという若者が最も多いというのは、むしろ驚きだ。
一方で、若者がクルマに乗ることの大きなハードルになっているのが、ランニングコスト(維持費)だ。今回の調査結果では、最も多かったのが「月額5000~1万円」という回答で22.8%、次いで「月額5000円以内」が21.7%になっている。0円と答えた人も合わせると、5割強の若者が「クルマの維持費として月額1万円以内しかかけられない」と回答していることになる。若者たちの金銭感覚では「クルマの維持費も、ケータイやスマートフォンの維持費同等になってほしい」のである。
すでにクルマを所有している人なら分かると思うが、クルマの維持費を月額1万円以下に抑えるのは、今のコスト構造では無理だ。所有・使用に必要な駐車場代やガソリン代だけでなく、クルマには様々な税金がかかる。さらに2年ごと(新車登録後初回は3年)に自動車検査登録制度に基づく車検を通さねばならず、一般的な整備車検では、ここで10万円以上の出費となってしまう。ほかにもクルマに乗るには任意保険が欠かせないが、若年層の保険料はべらぼうに高い。もちろん、こうした維持費の中にはクルマ利用に必須の必要経費もあるが、自動車諸税や整備車検などのコストは、アメリカなどと比べてかなり高いと言わざるを得ない。
筆者は自ら認めるクルマ好きだが、それでもクルマの維持費の高さには呆れるし、辟易している。都内でクルマを所有している以上、駐車場代の高さはいかんともしがたいが、多重課税で価格がかさ上げされているガソリン代、自動車諸税や車検費用の高さ、そして今年“実質値上げ”された首都高速を始めとする高速道路料金の割高ぶりなどを見るに、「クルマはつくづくコストパフォーマンスの悪い乗り物だなあ」としみじみ感じるのだ。筆者よりも賢く堅実なコスト意識を持つ今の若者が、クルマの維持費の高さを敬遠し、安易にクルマに手を出さないのは当然であろう。
誤解を恐れずに言えば、若者からクルマを取りあげ、遠ざけているのは、「維持費の高いクルマ利用環境」を作った大人たちなのである。この維持費の問題を解消しなければ、若年層にとってクルマは“酸っぱいブドウ”となり、次第に興味・関心すら持ってもらえなくなってしまうだろう。
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