コラム
» 2012年01月10日 08時01分 UPDATE

25年後の恐怖:街から医者が消える? 東大の研究所が明かす、“医療の不都合な真実” (1/4)

考えたくはないが、今は健康で働き盛りの人でもいずれはガンや心筋梗塞などにかかるだろう。ある日突然、具合が悪くなって近くの病院に担ぎ込まれても、そこに医師はいない。そんな恐ろしい未来を、東京大学の研究機関が“予言”している。

[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


yd_kubota3-1.jpg 久住英二医師、立川院ナビタスクリニック長。東京大学医科学研究所の先端医療社会コミュニケーションシステムで客員研究員を務める

 東北の被災地や一部の過疎地では「医師不足」が深刻な問題だが、東京近郊など大都市圏内で暮らしている人々は、医師が足りないなどと感じることはほとんどないだろう。

 いたるところに総合病院・大学病院・クリニックがあり、保険証さえ持参すれば、本人が望む医師から望む治療が受けられる。先進国の中でもかなり恵まれた環境にいるのだ。

 だが、現在30歳の人が55歳、40歳の人が65歳になる頃には、そんな時代は遠い話、ヘタをしたら最期を看取ってもらえなくなるかもしれないというのだ。

 「今から25年後、東京23区以外のベッドタウンなど都市部でも猛烈な医師不足が生じる可能性があります」

 そう語るのは、医師不足問題に詳しい立川ナビタスクリニック院長の久住英二医師。1892年に設立され、伝染病研究所を前身とし附属の研究病院を持つわが国随一の医学・生命科学のための研究所である東京大学医科学研究所の客員研究員も務めている。

 「千葉、埼玉、神奈川、茨城などのベッドタウンにお住まいの方の多くは手術や大きな治療を受ける場合、東京の病院を利用していますが、この人たちが高齢化して心筋梗塞になったり、ガンが慢性期になったりしたら電車で1時間もかけて東京の病院まで行けません。当然、地元の病院へ向かうのですが、そこには医師がいないという事態が予測されるのです」

 確かに目の前に立派な病院はある。だが、そこで診察をしてもらおうとしたら2時間、3時間待ちは当たり前。脳梗塞で倒れても救急車で運ばれても“たらいまわし”にされる恐れもあるというのだ。

 とはいっても埼玉や千葉など「首都圏」である。医師は足りているんじゃないの? と思われるかもしれないが、久住医師によるとそれは大きな誤解だという。

 「実は今、日本の中で人口当たりの医師数が足りていないのは埼玉県なんです。千葉県も酷くて首都圏の周りが極めて少ない。それは人口当たりの医学部からも顕著に分かります。日本の人口は1億2000万人で医学部は80校ありますから、平均150万人に医学部が1校です。東京都の人口は1300万人で13校ありますから100万人に1校。ところが、埼玉や千葉になると600〜700万人に1校しかないのです」(久住医師)

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