欧州、米国、日本……財政危機の不安が消えない藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2011年07月25日 11時57分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 7月21日に開かれたEU(欧州連合)緊急サミット。テーマは財政危機に陥っているギリシャへの第2次支援である。昨年危機に陥ってEUとIMF(国際通貨基金)の双方から融資を受けたものの、財政再建が進まず、ギリシャの資金調達は依然として難しかった。今回は、サミット直前までドイツとフランスの間で交渉が行われていた。

 その結果、EUやIMFの支援だけでなく、民間銀行の保有するギリシャ国債のリスケジューリング(償還期限の延長)についての妥協が成立し、1090億ユーロ、日本円にして約11兆円の支援枠が決まったのである。予想よりも大きな支援にホッと一息ついたのはギリシャやポルトガル、アイルランドといった国だけではない。スペインやイタリア、そして米国や日本も胸をなで下ろしたはずだ。

 ノーベル賞学者のジョセフ・スティグリッツ教授は、21日のEU緊急サミットを「歴史的な一歩だったのかもしれない」とフィナンシャルタイムズ紙に書いた。「やっとギリシャの問題は欧州の問題であると首脳たちが認識した」からである。とりわけドイツが自国民の不満(なぜ「怠け者」の国を「勤勉な」自分たちが助けなければならないのか)を押さえ込んでも、ギリシャを助けることを決めたことを指摘している。ただ、ギリシャ国債を保有する民間銀行が、ドイツ国民の不満を吸収するために、自発的な「協力」を要請されることになった。

 しかしユーロ危機はこれで解決できたわけではない。英エコノミスト誌は「Back from the brink, but still close to the edge」、つまり「崖っぷちからほんの一歩下がっただけ」と指摘する。確かに、ギリシャ支援の枠組みができたとはいえ、スペインやイタリアといったユーロ圏で大きな国が資金調達難に陥る可能性が消えたわけではない。実際、これらの国の国債の利回りはユーロ圏ができて以来という高い水準になっている。実際、これまでの国と違って、イタリアやスペインといった大きな国で財政危機が発生したら、今回の支援体制では支えきれないことははっきりしている。

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