欧州、米国、日本……財政危機の不安が消えない藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2011年07月25日 11時57分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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財政支出の後遺症

 財政危機に陥った国を助けるスキームはできても、それで財政危機はなくならない。経済成長が軌道に乗り、それで税収が増え、同時に政府は緊縮政策を取ることによって、財政再建の道筋ができるまでは安心できないのである。もともとこれらの国が財政危機に陥ったのは、2008年のリーマンショックが原因だ。経済の急激な縮小を避けるために、政府が財政支出によって下支えをしようとした結果である。

 中国なども60兆円に及ぶ財政支出によって経済を支えたが、発展途上にある国と、欧米や日本のように成熟した国とでは財政支出増加の後遺症は大きく異なる。英国で昨年成立した保守党と自民党の連立政権が、財政再建に大きく舵を切ったのも、リーマンショックの後遺症から抜け出そうとしたためだ。

 いまだに抜け出すめどが立たない国も多い。すでに国債の利回りが上昇しているイタリアやスペインもそうだが、いちばん注目されているのは米国だ。米国は政府が借り入れることができる債務の上限が法律で決められており、このままでは連邦政府の資金が底をつく。連邦債務の削減を約束しながら、当面の上限を引き上げようという交渉が、ホワイトハウスと連邦議会の間で続いているものの、共和党が多数を占める議会下院が強硬姿勢を取っているため、妥協が成立しない。8月2日までに法律を成立させるというデッドラインが迫っているが、7月24日の段階でまだ話はまとまっていない。一部政府の部門が閉鎖され、職員がレイオフされるというような事態になる可能性もある。

 今のところ、欧米の財政危機があるために、日本が資金の避難場所となって円高に振れている。しかしもし欧米の財政危機で金融市場が不安定になると、果たして日本の国債の市場がいつまで安定的でいられるのか、保証の限りではあるまい。

 国民の金融資産が1500兆円あるとか、外貨準備が1兆ドルあるとか、対外純資産で250兆円を超える世界最大の債権国であるとか言われても、GDP(国内総生産)の2倍にも達する公的借金の重みが減るわけではない。国内の資金が海外に逃げれば、たちまち国債発行に支障を来すことにもなりかねないのである。

 そして日本の国債が売り込まれたら、その時になって慌てても遅いことだけははっきりしている。欧米がもし立ち直ってくれば、その時に標的にされるのは日本かもしれないのである。その時は、デフレと大震災と債務危機で日本は、緊縮経済という奈落の底へ突き落とされるリスクを覚悟しておかなければならない。

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