メディアが生き残る、キーワードは“主観”：相場英雄の時事日想（3/3 ページ）

[相場英雄，Business Media 誠]

“主観”が生き残りの道？

　「公正中立がマスコミの使命」――。

　筆者が駆け出し時代、先輩からこんな言葉を聞かされた。筆者自身、一方の当事者から取材したあとは、利害が対立する関係者から話を聞いた。主観を入れることは、新聞の社説などを除けばタブーだ。

　今回触れた2つのケースは、「ルポ」や「コラム」の体裁を取っていることから、主観が前面に出ても違和感がない。ただ、企画の根底にあるのは、ベテランだから取材できた事実関係や、諸問題の根深さを抉る観察眼の確かさなのだ。

　新聞やテレビ報道の横並び、画一化に対する批判が日増しに強まっている。インターネットの普及、SNSの急速な台頭とともに、読者や視聴者の求める“ネタ”の傾向は、確実に変質している。元記者の筆者が掛け値なしで面白いと感じる企画は、一般読者にとっても新鮮であるに違いないと判断している次第だ。

　今回触れたような行動力豊かなベテラン記者は、残念ながら大手メディアの中では少数派と言わざるを得ない。「なんとか委員」の肩書きを持つ大半のベテランは、社内抗争や業界内での発言力確保に躍起だ。マスコミ業界は貴重な戦力の前線復帰と有効活用を真剣に考えるべき時期にきている。