菅首相、自分を延命させるために、課題を食い散らかさないでくれ藤田正美の時事日想(2/3 ページ)

» 2011年06月20日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

 最高権力者が居座ると、まことに始末に負えないものであることがよく分かる。しかし菅首相は「歴史への責任」をどう考えているのだろうか。いま日本が置かれている状況はどう考えても楽観を許されないものだ。震災からの復興、財政の再建、持続可能な社会保障の確立、デフレからの脱却、農業の再生、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)など貿易自由化の促進、新たなエネルギー政策の策定。もちろん優先順位はあるにしても、これらの課題のどれ1つ先送りはできない。菅首相が居座り続ければ、それによって政治の停滞が生まれ、時間が浪費されてしまう。

 第一、今年度予算の公債特例法案をどうやって成立させようというのだろうか。菅首相は自民党に対して「歴史への反逆」と非難したが、今年度予算の財源を確保するために自らの身を捨てなければならないとしたら、それをするのが指導者というものである。権力を握っている者は、それぐらいの「徳」がなければならない(もっとも最近は「徳」などという言葉は死語かもしれないが)。

要するに“チキンレース”

 こうやって粘っているうちに自民党も妥協せざるをえなくなり、ひょっとすると延命できるという打算が首相にはあるのだろうか。要するに“チキンレース”というわけだ。もし自民党が先に折れれば、辞任の時期をあいまいにしていたことが「役に立つ」ことになる。たとえ辞任が来年、極端に言えば再来年になっても「一定のメド」が立ったときにという言葉に嘘はなかったと強弁できるからである。

 実際のところ、これだけ難題を抱えていては誰が総理になってもその責任を背負いきれないのかもしれない。だからこそ震災復興に早くメドを立てて、国が抱える次の難題に立ち向かう新たな指導者を選ぶ必要があるのだと思うが、どうも菅首相は自分ができると思い込んでいるようだ。

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