菅首相、自分を延命させるために、課題を食い散らかさないでくれ藤田正美の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年06月20日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 退陣表明してからというもの、菅首相がハイになっているように見える。1日でも長くその座にとどまるという分かりやすい目標ができたということなのだろうか。国会内で開かれたセミナーで、再生可能エネルギーの買い取りを電力会社に義務づける法案を「通さないと政治家としての責任を果たしたことにならない」と高ぶった様子で語った。また2次補正が退陣のメドと言われていたのに「1.5次補正」を組むように指示した。さらには国民新党の亀井代表との会談で、「内閣改造」までやるという案が出ている。

野党の打つ手

 首相の権力への執着は、ある意味で見上げたものだが、与党内でも困惑する人が多いだろう。第一、内閣改造といっても何日続くのか分からない大臣の椅子に座りたいと思う人がいるのだろうか。官僚のほうも果たして新大臣をどう受け止めればいいのか戸惑うに違いない。

 人事など結局は官僚があげてきた案にそのまま判を押すだけになる。もともと付き合いがあるわけでもなく、人柄など分かっていないのだから仕方があるまい。大臣の椅子に馴染む間もなく首相が交代すれば、自分がとどまれるかどうかは新首相の腹一つだから、これほど頼りにならないものはない。

 こうなると野党も打つ手があまりなくなる。もちろん参議院での問責決議という手はあるが、首相を引きずり下ろすことばかりにエネルギーを使っていると非難される恐れもあるから、タイミングはよほど慎重にしなければなるまい(すでに内閣不信任案で「失敗」しているから、問責でも空振りしたら谷垣総裁の責任問題にもなりかねない)。菅首相が居座り続ける限り、与野党協力の道が開けないと突っ張ったことから言えば、延命に手を貸すようなことに党内で合意が得られる可能性はほとんどない。

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