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» 2011年06月16日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:ドクロの数珠を若者に――「祈りの多様化」に商機あり (1/3)

ドクロデザインの数珠や一番摘み静岡新茶のお線香など、ユニークな仏具関連商品を展開するお仏壇のやまき。浅野秀浩社長が商品開発に取り組んだ背景には、「業界は若い人向けの商品を作っていなかった」ことに責任を感じたからだという。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 先輩が死に、叔父が死に、祖父が死に、祖母も叔母も死に、そして父も死んだ。多くの知人も死んで、その葬儀に参列してきた。いつから私は、“数珠”を手にしてそこに出向いただろうか? 告白すると……30代後半に「ようやく」だった。恥ずかしい。

 お仏壇のやまき(本社静岡市)の浅野秀浩社長も葬儀に参列するたび、手持ちぶさたの人々を見た。男性は喪服に腕章、女性は首に真珠を飾る。だが手に念珠を持たない20〜30代がたくさんいた。浅野さんは思った。

 「業界は50〜60代の人だけをお客さんと見ていた。若い人向けの商品を作っていなかった。責任を感じましたね」

 数珠、正式には「念珠」は、念仏を何回唱えたか玉をたぐって覚える道具である。お通夜やお葬式の時だけでなく、日々仏壇やお墓でご先祖様に「ありがとう」と感謝をする時にも手にするもの。若い世代にも普及させたいと考えた。

 約2年後の2011年1月、同社は若い男女向けに「二十歳の念珠」ブランドを立ち上げた。「魂」ドクロ彫ヒスイ入の念珠は強烈だ。柘植(つげ)の木の手彫りドクロがぐるりと並び、2つの天玉のオニキスがドクロの怪しさを強調する。房を見てほしい。髪に入れるアクセントカラーのようにオニキス色が幾筋か入る。実際に手に取るとマッシブな質量にびっくり。同社オンラインショップで8900円で販売している。

ah_img4dd38a240efff.jpg 「魂」

 女性用の「憩」トンボ玉 黒オニキス仕立(6900円)はおしゃれで美しい。和モダンなカラーリング、石の模様がやさしい。私はこっちが好き。

ah_img4dd38cb885ebe.jpg 「憩」

 「発売後、腰パンのジーンズの若者が、ドクロの念珠を後ろのポケットからのぞかせて歩いていたという報告が店舗から上がり、市場創造の手応えを感じました」

 デザインはやまき。製造は京都の一流職人、厳選された素材と本物志向で新市場開拓する浅野社長の狙いは当たった。20〜30代の新規顧客を開拓しつつある。だが、1つ誤算があった。

 「思ったより30代のお客さまが多いんです。そこで10代を狙うことにしました」

 この初夏、十代の若者向けに『10’s(ジュ〜ズ)』ブランドを立ち上げる。人気ベトナム人デザイナーのチャン・ルーのようなデザインで、親玉はシルバー巻き、花模様のトンボ玉、房無しタイプなど、価格も従来の半額に近付けるなど、常識を打ち破る商品を発売する。

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