ドクロの数珠を若者に――「祈りの多様化」に商機あり郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年06月16日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

“あんなお線香”に勝つ

 市場創造の挑戦は、“お茶入りのお線香”や“賞味期限のある仏壇”も生み出した。

 香ばしいお茶の匂い。静岡県産の一番摘み茶葉を使用した一番摘み静岡新茶のお線香。思わず何度も嗅いでいた。自然な色合いも和む。

一番摘み静岡新茶のお線香

 「お線香の販売経路は専門店が約3割、量販店が約7割と言われます。『なぜスーパーやドラッグストア、ホームセンターで線香を買うのか?』と聞いてみると、『便利だから』と言う。そこで売っているのは業界人に言わせれば、“あんなお線香”なんですよ。そこで高付加価値商品で量販店チャネルの奪取をしようと思いました」

 地元の老舗製茶問屋「白形傳四郎商店」から茶葉エキスを仕入れ、高品質の線香製造の「薫寿堂」に生産委託。緑茶成分を増やすと煙が増え、少ないと香らない。トレードオフで迷った末、新茶成分を約20%配合したアロマお線香が誕生。100グラム入り930円は“あんなお線香”のおよそ倍だが、多数のメディアが取りあげるヒットに。

 仏壇仏具業界の常識を破る経営――そこには“すごい経営”を目指すきっかけがあった。

仏壇に賞味期限を設ける

 浅野さんは1987年にお仏壇のやまきに入社。仕事をしながら経営工学、トヨタ生産方式を学び、業容を拡張。北洋材の原材料加工工場をカナダに、仏壇生産工場を中国に、そして彫刻をインドネシアで、合計3つの工場で総勢1200人の従業員を抱える“世界トップの仏壇企業”を育てた。だがトップだったのはつかの間、中国企業が資本力にモノを言わせて、やまきより大きな会社を作った。浅野さんは「何がすごい経営なのか?」と激しく考えた。

 出した答えは規模を追う経営ではなく、“従業員50人以下”の強い会社である。

お仏壇のやまきの浅野秀浩社長

 「100億円の売り上げで2億円の利益を残すのも偉い。だが10億円の売り上げで2億円を利益に残せないか。そのためにどんな経営をすべきか」

 1200人の事業を譲渡し、2003年にやまきの代表取締役に就任。県下に仏壇仏具のトータルサポートをする6店舗を展開した。仏壇に賞味期限を設け、「仏壇在庫回転率」を設定(在庫回転率は約3回転強)。ジャストインタイムで組み立てた仏壇を4カ月以内で販売する。さらに新製品が売上高に占める比率を30%まで高めた。これをわずか30人の社員で実践する。

 モットーは“破壊的イノベーション”。「小さな市場に新技術からイノベーションが生まれ、新市場を創出する」という経営学大家のクレイトン・クリステンセン氏の教えを信奉する。そのベースにあるのは供養市場の変化を読み切る目だ。変化の1つは“会館バブル”である。

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