月12万ドルの収入も……自費出版が笑う日(1/2 ページ)

» 2011年04月29日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」がある。


 電子書籍フォーマットにおける自費出版が、歴史と定評をもつ大手出版社に脅威を与えている。もちろん、これは米国の状況であり、まだ、日本の状況を反映するものではない。“まだ”と書いたが、それは、日本にも同様な状況がまもなく訪れると私が確信しているからである。

 米国時間の4月27日、アマゾンが発表した『電子書籍売上上位50冊』の図表には山が2つある。1つは、13ドルで売られている書籍の山。これが50冊中16冊を占め、最も多い。2つ目の山は価格が1ドルかそれ未満のもの。50冊中12冊を占めるのがこの山で、図表中2番目に高い山になっている。

 13ドルで売られている書籍の山は、歴史も定評もある大手出版社から発行されている、いわゆる「ベストセラー」の山であると考えていただければまず間違いない。そして二番目の山は、ここ1〜2年の間に隆盛してきた「無名作家」による自費出版の山である。

 例えば、ケンタッキー州ルイビルに住む「アマチュア作家」ジョン・ロック氏は、アマゾンのキンドル・ストアでミステリー小説を1冊99セントで売り、月12万ドルの収入を稼いでいる。アマゾンの自費出版では、著者の取り分35%に対してアマゾンの取り分は65%。つまり、ロック氏の懐に入るのは1冊当たり35セントほどということになる。

 1冊当たりの収入はすずめの涙ほどだが、売れる数が半端ではない。かつては「蔑視」されていた自費出版作家だが、電子出版とソーシャル・メディアという2つのプラットフォームの活用がこれらの作家たちにいまだかつて無いパワーを与え、従来型の大手出版社を脅かしている。

 かつて、大手出版社の後ろ盾を受けたベストセラー作家と、自費出版ベースの無名作家の作品が同じ棚に並ぶことはなかった。しかし、今日では、電子出版とソーシャル・メディアという2つのプラットフォームが、書籍流通という競争の土俵をフラット化したのだ。かつては、大手出版社の莫大な流通網とマーケティング予算がなければ、作家は人の目に触れることができなかった。今では、自費出版作家も、ベストセラー作家と同様のスポットライトを浴びることができる。

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