コラム
» 2011年04月14日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:その“善意”が命を奪うかもしれない……SNSの隠れた凶暴性 (1/3)

誘拐事件が発生すれば、メディアは「報道協定」を結ぶ。誘拐犯がどこで警察や記者を監視しているか分からないため、メディアは取材活動を自粛する。しかし捜査員が聞き込みに回った際の動向が、ネット上に流れてしまったのだ。

[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 本コラムでは、TwitterやYoutubeなどのSNS、動画投稿サイトの利用者急増とともに、一次情報が既存メディアを凌駕(りょうが)する速度で拡散することに度々触れてきた。今回の東日本大震災でも、被災者間の情報ツールとして新興のメディアが有効利用されたのは間違いない。また政府の当事者能力の欠如もさまざまな新興勢力によって暴かれた。

 筆者は新たな潮流を肯定的にとらえているが、過日、以前から懸念していた事態が発生した。Twitterを通じ、刑事事件捜査の一旦が不用意に拡散したからだ。SNSが持つ隠れた凶暴性について触れてみる。

Twitterで捜査情報拡散

yd_aiba1.jpg 捜査員が聞き込みに回った際の動向がTwitterを通じて拡散した

 筆者が強い懸念を抱いたのは、3月初旬に熊本市で起きた女児遺棄事件だ。幼い子供が事件に巻き込まれたことで、同じく子供を持つ親として筆者は犯人への強い怒りを禁じ得ない。被害者のご冥福をお祈りすると同時に、ご遺族に心からのお見舞いを申し上げさせていただく次第だ。

 この事件の関連として、熊本県警捜査員が聞き込みに回った際の動向がTwitterを通じて拡散した、とのニュースに触れた読者もいるだろう。報道に触れた際、筆者は我が目を疑った。熊本のケースは営利誘拐事件ではなかったが、新聞・テレビの報道部門に勤務した人間ならば誰でも知る「報道協定」の大きな穴が口を開けていたからに他ならない。誘拐などの凶悪事件に触れたことのある人間にとって、件のツイートは人命を危険にさらす“凶暴”なものに映ったはずだ。

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