なぜ女性誌の購読者は消費意欲が活発なのか(2/2 ページ)

» 2011年03月04日 08時00分 公開
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紙媒体の通販カタログ化

 もう1つ、女性誌自体の変化もあります。30年にわたって女性誌を研究している日本大学教授の仲川秀樹氏によると……。

 「1970年代から1980年代にかけては、女性誌はファッションの参考書のようなものでした。読者は女性誌が提案する世界観に憧れを抱き、そのスタイルを日々のコーディネイトの参考にしていました。

(中略)

 しかし、1995年以降、雑誌が細かく分化し、それぞれが独自のスタイルを提案するようになっていきます。すると、読者は自分の趣向と位置する雑誌に登場するモデルを理想として、彼女たちが身につけている洋服を店頭で指名買いすることも増えました」

 「女性誌が提案するファッションがよりリアルになったことで、雑誌の講読と商品の購入がより直接的につながったといえます」(『宣伝会議』2011.2.15「研究室へようこそ」より)

 実際、女性誌に限りませんが、紙媒体がある種、「通販カタログ」化する傾向が見えていますね。ですから、女性誌はますます「消費する気のある人」のためのメディアになっているわけです。前述したように、最終的には自社製品を買ってもらいたい広告主たる企業にとっては大変効率が良いメディアであると言えるのではないでしょうか。

 とはいえ、現実には女性誌の多くは、広告収益の持続な低下に苦しんでいます。この不振の原因は、1つには、ご紹介した調査のような形で女性誌の媒体価値を明確に示せてこなかったことがあります。

 もう1つは、広告主・広告会社側としては、さまざまな媒体の特性を比較検討してメディアミックスを行いたいにも関わらず、個別媒体間の相対比較(実売部数とかだけでなく、今回のような定性寄りのデータも含めた)ができないことがあります。

 実は媒体側(出版社)としては、こうした相対比較が行われることに対して躊躇(ちゅうちょ)しているというか、抵抗があるのです。「うちはうち、ほかと比べられたくない」という意識がある。しかし、そのことが結局、自分たちの首を絞めているのです。

 ファッションのネット販売の雄「ZOZOTOWN」が女性に大人気となり、急成長している背景には、多様なファッションブランドの仕様や写真をそのまま利用するのではなく、ZOZOTOWN独自の基準に基づいてデータを整備し、横串で比較検討できるようにしている点にあることを、女性誌業界の人たちも学ぶべきかもしれません。(松尾順)

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