コラム
» 2011年02月28日 08時00分 UPDATE

アップルのすごい調達戦略 (1/2)

iPhoneなどのヒットで快進撃を続けるアップル。2010年に半導体を購入した金額は、世界3位になる。しかし、それだけの量を調達するにもかかわらず、アップルは値切り交渉をしないのだという。その理由とは。

[野町直弘,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:野町直弘

アジルアソシエイツ社長。慶應義塾大学経済学部卒業後、大手自動車メーカーに就職。同社および外資系金融業にて調達・購買実務および、調達部門の立ち上げを経験。コンサルティング会社にて調達・購買、ロジスティック、BPR、SCMなどのプロジェクトを担当。ベンチャー系WebインテグレーターでCOOおよびB2Bチームの立ち上げを行う。その後独立しアジルアソシエイツを設立。


 今年初め、日経新聞に衝撃的な記事が掲載されていました。

 それによると、「アップルが2010年に購入した半導体は120億ドルで世界3位の見込み。2011年には韓国サムスン電子を抜いて、米ヒューレット・パッカードに次ぐ2位となる見通しだ」とあり、「低消費電力プロセッサー『A4』のようにアップルは本体の仕様が世界共通なため、部品メーカー1社からの調達量はケタ違いに大きくなる」とのことです。

 つまり極めて1品目、1SKU※の調達数量が大きくなっているのです。このような前提のもとに、「発注量が他社より1ケタ、2ケタ多いのに値切らない」どころか、他社よりむしろ高く買うことで安定供給を保証してもらうのだそうです。

※SKU……Stock Keeping Unit。在庫管理を行う場合の最小の分類単位。

 「これが本当の話であればすごいことだな」と思っていましたが、2月16日付けの日経産業新聞を読んで改めて驚かされました。「アップル、取引先監査報告、3施設から調達中止、規範違反は37拠点」という記事です。

 内容は「2月14日にアップルが取引先監査報告書を公開し、37拠点でCSR違反のような規範違反があることが判明した。彼らは中国を中心とした全世界の 127施設を対象に調査を行った。この調査は昨年6月、ティム・クック最高執行責任者(COO)らを中国に派遣し、独立した第三者の調査チームが取引先の従業員1000人以上を対象にメンタルヘルスや労働環境などの聞き取り調査を実施した」というものです。

 この調査のすごいところは徹底力です。COOが取引先に乗り込み、単なる書面でのアンケート調査に終わらず、1000人以上の取引先の従業員の調査を第三者の調査チームを雇って(?)行っていることです。いくらかけているのでしょうか?

 年初の記事についても2月の記事についても共通するのは、調達力の強さを武器にした戦略です。

 例えば「発注量が1ケタ、2ケタ多いのに値切らない。むしろ高く買う」というのは、自分が買っている部品がいくらであるべきなのか分かるからできるのです。また安定供給の確保についてもそれを支える情報インフラなどのプラットフォームが整備されているから可能となります。日本の会社がよく言う「きめ細かな対応力(供給力)を持ったサプライヤとの取引」だけではないのです。

 また、2月の記事に関してもそうです。これだけ大規模な調査ができるのは、それだけサプライヤに対する影響力があるからです。それでなければこれだけ大規模な監査に協力してもらえないでしょう。これも同様に多くの日本企業の課題と言えます。

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