ブランドの魅力とは「これまでの歴史」×「これからの未来観」デザイン、マーケティング、ブランドと“ナントカ”は使いよう。(1/3 ページ)

» 2011年02月03日 08時00分 公開
[林田浩一,Business Media 誠]
誠ブログ

 デザインやマーケティング、ブランドといったものは、今や中小企業でも無視できないものとなっています。私は、自動車メーカーでデザイナーとして10年弱を過ごした後、経営戦略のツールとしてのデザイン活用という、いってみれば「デザインの使いこなし方」という方向へ興味が拡がり、気が付いたら一言で「●●屋」と表せない感じになっていました。

 今では、プロダクトデザイナーだったり、デザインやマーケティング、ブランドといったことに関するコンサルタントだったり、というようなことで企業の商品企画からデザイン開発、マーケティングまでを色々な形態でお手伝いする仕事をしています。

 そこで今回はクルマ、その中でも少し派手なクルマである、フェラーリとポルシェをネタにしつつブランド価値について思っていることを書いてみたいと思います。

ブランドの魅力づくりに欲しいもの

 現在、われわれのまわりには膨大な量の情報が流れており、その量は日々拡大しています。ひとつひとつのビジネスや企業としてみれば、何らかの(顧客にとって意味がある)“目印”がなければその存在が埋もれやすいということにもなります。

 その対応策として、企業におけるマーケティングでのブランドの重要度が増しているのはご承知のとおりです。ブランド戦略というと「継続性」や「一貫性」といったキーワードが、重要なものとしてよく聞かれます。確かに、長く続いている有名ブランドには、これらの要素が備わっています。しかし、それだけでは継続的なブランド価値を獲得・維持していくことは難しいように感じています。

 これらに加えて欲しいのは、「未来観」というようなもの。このことを感じたのは、フェラーリの最新モデルである458イタリアが発表されたのを受けて、このクルマについての情報を集めていたときでした(もちろん自分が購入するためではなく、仕事上の情報収集です)。

 クルマにはスーパーカーやスポーツカーというニッチな市場がありまして、中でもフェラーリとポルシェという2つのメーカーは、モノ(製品)としてのクルマのみならず、商品戦略やブランド戦略を見ていても興味深いものがあります。もちろん私は、両社共に内部の人として過ごしたことはありませんから、戦略といっても勝手な仮説でありますが。

 どちらも、スポーツカー専業ビジネス。生産規模(世界のディーラーへ販売した数)でいうとフェラーリは年間6000台少々(2009年)、ポルシェは年間9万5000台程度(2010年)と異なり、また対象顧客層も異なるビジネスを展開しています。

 しかし、どちらも「レース生まれ」をブランドの核に置いた製品開発で、ブランドイメージを蓄積してきたという点では共通しています。そして、世の中の景気が悪いといいながらも、どちらも業績は悪くないというところも。

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