ブランドの魅力とは「これまでの歴史」×「これからの未来観」デザイン、マーケティング、ブランドと“ナントカ”は使いよう。(2/3 ページ)

» 2011年02月03日 08時00分 公開
[林田浩一,Business Media 誠]
誠ブログ

フェラーリブランドに漂うある種の行き詰まり感

 先のフェラーリの最新モデル、458イタリアから感じたのはフェラーリブランドに漂うある種の行き詰まり感のようなもの。これが不思議とポルシェからは感じません。この差を考えた際に頭に浮かんだのは、「未来の方向性」が分かりやすいか否かという点でした。

 同じように「レース生まれ」というコンセプトを使いながら、フェラーリが市販車(ロードカー)のオーナーへ提供している世界観はレーシングカーの疑似体験。そのためハードウエアやスペックが重要。現在のフェラーリが最も力を入れているレースカテゴリーはF1ですから、そのイメージを訴求する技術的なデバイスやスタイルを、市販車である458イタリアにも盛り込もうとしているのは理解できます。

 モデルが新しくなるごとに最新技術を投入し、一般路上では使い切れない程のパフォーマンスを追求していく(同時にイージードライブも)。フェラーリを購入する顧客には、走らせること、高性能を乗りこなすことを価値とする走り志向の人だけでなく、コレクターとまではいかなくとも、希少性と所有そのものに価値をおいている人も少なくありません。ですから、これまでの展開の仕方は、戦略的には正しかったのだと思います。

 しかし、フェラーリのラインアップの中でもミドルクラスである458イタリアでさえ、性能的にはある意味究極のところまできてしまっているのを見ると、現状のF1(のイメージの)疑似体験のその先として、フェラーリはどこへ向かうのだろうとも感じるのです。ハイブリッドカーの実験車などもモーターショーなどで公開していますが、まだまだPR的な雰囲気を強く感じてしまいます。

林田浩一 フェラーリ公式サイトより

 私が商品開発やデザイン、ブランドマネジメントなどの仕事でお手伝いしている顧客に、フェラーリのカスタマイズを始めとする、アフターマーケットビジネスや点検整備などを手掛ける企業があります。ここの顧客(エンドユーザー)は、所有よりも走り志向のフェラーリユーザーが多いようですが、こういったタイプのフェラーリユーザーの方々が、最新の458イタリアにあまり興味を示さず、購入もしていない雰囲気なのも、これまでと様子が少し変わってきたなぁと思う点です。

 さらには、フェラーリが少しずつながらも市場への供給量を増やしてきていることは、事業の拡大という面と、これまで価値のひとつであった希少性が希薄化していくという面があります。そのバランスを彼らがどこで取ろうとしているのかも興味深いところです。