内定をもらっても安心してはいけない……危ないメディアの見分け方相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年12月16日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 「大手メディア、報道部門の先行きはどうなるのか?」――。

 最近、筆者のもとにこのような質問が舞い込むケースが増えている。その多くは、メディアを志望する就活中の諸君からだ。大手新聞やテレビの経営内容は一応開示されているが、本当の姿は中々伝わってこない。今回の時事日想は、筆者独自の視点で国内大手紙、テレビの先行きを占ってみたい。キーワードは“人繰り”だ。既に内定を取ったからといっても、安心するのはまだ早い。

きっかけは団塊世代の大量離職

 「2007年問題」という言葉をご存じだろうか。団塊世代が大量に定年退職し、職場を去る現象を指した用語だ。製造業や官公庁から団塊世代が去り、ベテランが持つスキルを後進にどのように継承するかが社会問題化した。

 もちろん、国内のメディア企業にとっても2007年問題は切実なテーマだったのだ(関連記事)。国内の大手紙、テレビの多くは国内外に多数の取材拠点を設けており、1人の人材が異動、あるいは退職することで、各拠点の人材が“玉突き”のように異動するからだ。

 同問題が人繰り難に直結するとの危機感が高まった2005〜2006年当時、大手紙、テレビ各社は中途採用試験を何度も実施した。もちろん、他社の人材を引き抜き、即戦力として人繰り難をカバーするために他ならない。

 当時、筆者の周囲でも「○○新聞の試験会場にはウチの記者が10人いた」「○○テレビの会場では15人」などの噂話が飛び交った。

 その構図はシンプルだ。経営体力に勝る社が、弱い側の企業の人材を狙っていたのだ。筆者が知るだけで、古巣や他社の数十人の人材が引き抜かれた。

 リーマンショックを経てからの世界的な大不況で、大手マスコミの多くが広告収入の激減といういまだかつてない苦境に立たされ、販売部数や視聴率の低迷に苦しんでいる。こうした環境下、先に触れた“経営体力に勝る社が、弱い側の企業の人材を狙って”という構図はより先鋭化しているのだ。

 未曾有の就職氷河期の現在、世間で名の通ったメディアの内定を勝ち取った読者もいるはずだ。だが、安心してはいけない。就職する企業が“強いか弱いか”のどちらに区分されているのかを精査する必要があるのだ。

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