内定をもらっても安心してはいけない……危ないメディアの見分け方相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2010年12月16日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

老人とヒヨコでは勝負にならない

弱い側のメディア企業には大量の新人と定年間近のベテランが多い(写真と本文は関係ありません)

 “弱い”側のメディア企業はどうなっているか。大量の新人と定年間近の大ベテランが多いいびつな人事構成になっているのだ。旧知の記者の多くは、こうした状況を“老人とヒヨコ”と称している。

 先に触れたように、経営体力に勝る企業は、働き盛りの30歳代前半の記者を大量に他社から引き抜いた。また、こうした動きを見た同世代記者が、自ら進んで転職するケースも相次いだ。

 この世代は、地方勤務で警察、県政、スポーツなどのさまざまな分野を一通り経験し、東京に戻ったクチだ。東京では永田町や霞ヶ関、あるいは経済界の主要ポストの取材を数年経験し、連日の夜討ち・朝駆けにも耐えうるスタミナも有している。記者としては一番無理が利き、脂の乗った世代なのだ。

 一方、こうした世代が大量にいなくなった社はどうなっているか。働き盛り世代の穴を埋めるべく、新人記者を大量に採用する。だが、新人を実地で指導することができる働き盛り世代が決定的に不足しているため、新人のスキルは一向に向上しない。また、新人の原稿を読み、管理するデスクたちは定年後のポスト確保に躍起となり、新人教育はおろそかになりがちとなる。すなわち、新人が育たず、記事の質が低下する負のスパイラルが生まれているのだ。

 採用された新人を待ち受けている状況はなにか。ここでもやはり人繰りが関係してくる。

 例えば、地方都市で事件・事故の類いが発生し、取材現場に駆け付けたとする。応援は基本的にこない。こうした中、県警の会見、捜査幹部への夜回り、被害者のコメント取りはすべて1人でこなさねばならなくなる。この間、食事はすべて自力で調達しなければならず、移動も自家用車、あるいは公共交通機関を乗り継ぐ必要に迫られる。

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