光GENJIは不運だった!?――ジャニーズから学ぶ「マーケティング的発想」「半農半X」 ビジネスコンサルタントと、農業と……(1/3 ページ)

» 2010年12月10日 20時09分 公開
[荒木亨二,Business Media 誠]
誠ブログ

 先日の夜、酒を飲みながら、フジテレビの「FNS歌謡祭」を見るとはなしに見ていた。「あら? これって“何とか賞”とかくれる番組じゃないの?」と気付いたのは、番組が始まってすぐのこと。いろんな歌手が、自分の過去から現在の名曲をメドレーで歌っている。「やっぱり昔の曲って、良いよな〜」と、懐かしく見ていたのだが、とある想念が頭から離れない……。

 「これって、もしかしてジャニーズ祭?」

 オープニングから見ていたのだが、どうもジャニーズ事務所の歌手が多いような気がする。いや、明らかに多い! 嵐、Kinki Kids、マッチ、V6、TOKIO、SMAP……元ジャニーズのヒロミGo! と、ぞろぞろ。しかもジャニーズ歌手の出演順が絶妙なバランスで組まれており、数組の歌手が歌い終わるとジャニーズ、また数組をはさんで出てくるのはジャニーズと、何ともタイミングが良い。

『世界に一つだけの花』

 さらには時折、大物歌手とジャニーズがコラボするなど飽きさせない演出があり、「なるほどね」と見ていると、終盤に突入するや、ついにはジャニーズの先輩・後輩のコラボが始まり、エンディングはSMAPの国民的ソング『世界に一つだけの花』を出演歌手全員で大合唱。「これはもしや“ジャニーズ祭”ではないのか?」と錯覚してしまうほどだった。

 日本の芸能界、特に男性アイドルに関しては、長い間、かなりの部分をジャニーズに頼ってきたと言っても過言ではない。私が物心ついたころから、いつの時代にも必ず“ジャニーズの誰かしら”がテレビの中できらびやかに歌い、踊っていた。小学生の時はたのきんトリオ全盛、続いてシブがき隊、少年隊。中学では光GENJI、そして今は嵐にSMAPに……と「男性アイドル=ジャニーズ」のごとき強烈なイメージがある。

 当たり前のようにとらえている人も多いだろうが、よくよく考えてみると、実はこれはかなりの偉業であることに今さらながら驚きはしないだろうか? 浮き沈みの激しい芸能界というギョーカイにおいて、これだけ強大かつ長期に渡るプレゼンスを発揮し続けている「株式会社ジャニーズ事務所」。1つの事務所、1つの企業に過ぎない小さな存在が、なぜこれほどまでに芸能界で大きなチカラとなっているのだろうか?

天才的? 巧みなマーケティング戦略で芸能マーケットを自ら創出

 芸能界にマーケティングって必要なの?

 そんな疑問を持つ方もいるだろう。通常はエンドユーザーに近い賞品、例えばクルマや食品といったメーカー企業など、いわゆる普通の企業がマーケティングに注力しているとの認識が強いが、マーケティングはあらゆる業界や企業に必須の経済活動である。

 マーケティングという概念を簡単に述べると、「商品やサービスなどをいかに売るかを徹底的に研究する経済活動」を指す。芸能人のエンドユーザーとはすなわちファンなので、芸能界もマーケティングを意識しなければならないのは、当然の帰結である。

 筆者はジャニーズ事務所にマーケティング部署があるのかどうかは知らない。しかし、マーケティング的発想やマーケティング的経営センスがあることは、テレビ業界や音楽業界の歴史を振り返ると、シンプルに理解できる。ジャニーズは決して偶然、芸能界で生き残ってきたわけではない。

 時代の変化を先取りしながら、常に企業戦略を巧みに修正し、自らの知恵と努力で現在のポジションを築いてきたのである。簡単に言えば、「自分で芸能マーケットを作り出してきた」とも言える。ここではアイドル全盛の1980年代から現在に至る男性アイドルの役割を観察しながら、ジャニーズの発想とセンスを見ていこう。

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