光GENJIは不運だった!?――ジャニーズから学ぶ「マーケティング的発想」「半農半X」 ビジネスコンサルタントと、農業と……(3/3 ページ)

» 2010年12月10日 20時09分 公開
[荒木亨二,Business Media 誠]
誠ブログ
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グループで多面化戦略

 見事にバラエティに進出したジャニーズだが、商品戦略も巧みであった。「イケメンばかりがアイドルではない!」とばかりに、1990年代組のグループには必ずやオチを設けた。SMAPの中居正広、TOKIOの城島茂、V6のイノッチと、各グループに“アイドルらしからぬアイドル”を紛れ込ませた。

 歌が下手、アイドルなのにオッサン、顔が普通とちょっと異色なメンバーを投入しておくことで、バラエティ番組での活躍の幅を広げるとともに、グループ内でのイジラレ役を担当してもらうことでグループに個性が生まれた。異色メンバーがお笑いの期待に応え得るだけの素質を持っていた(教育された?)ことも大きい。光GENJIや男闘呼組にはこうしたメンバーは存在しなかった。

 グループの個性を生み出すのと同時並行的に、各メンバーのソロ活動も顕著になっていった。SMAPを例に挙げるなら、中居正広はMC、キムタクは俳優、草なぎ剛はバラエティーと俳優と、「個々が活躍する=単品売りする」ことで、仮に誰かの人気に陰りが見えたとしても、グループの力で補完することができる。グループというセット販売から個別販売に転換することで、芸能界やテレビにおける露出頻度も高まるという計算もあったのだろう。

 ジャニーズのマーケティングはテレビ業界の将来を見すえ、自ら動いた。その結果どうだろう? かつては「アイドル=若者」という図式があったが、もうすぐSMAPのメンバーたちは40代に突入する。立派なオッサンだ。かつて、男性アイドルは短命だった。若いうちはいいが、年齢を重ねるとともにテレビから消えていく宿命を背負っていた。

 しかし、ジャニーズの新たなマーケティングにより、男性アイドルを“一生の仕事”としてまっとうできる可能性まで出てきたのだ。歌からバラエティへ、グループの個性化・多面化という戦略変更によって、アイドルの高齢化問題も解決したと言える。 

マーケティングって何?

 マーケティングって何なのだろうか?

 こんなことを常々思う。それはマーケティングというコトバが多くの場合、きちんと理解されていないことが多いからだ。マーケティングという言葉から想起するものについて、極端な2タイプの考え方を持つビジネスパーソンがいるように思う。

 1つは「マーケティングを広く考えてしまうタイプ」。「何だか難解で自分には関わりない」と思い込んでしまう。やや学問に近い印象だろうか。

 もう1つは「狭く考えてしまうタイプ」。こちらはマーケティングに仕事上何らかの関わりを持つ人が多い。マーケティングの基礎を学び、忠実に実行することが多い。

 広く考えてしまうと、「マーケティングは自分には関係ない」と考えがちだが、それはビジネスの幅を狭めてしまうことにつながる。営業やSE、接客や管理など、あらゆる職種の最終的な目標が「自社のモノやサービスを世の中に広く売ること」と設定するなら、どのような職種にもマーケティング的感覚は必須である。

 営業マンが読むべきは営業術のビジネス書? それならマーケティングの本を読んだ方が、よほどためになる。マーケティングの最終的な目標が「いかに売るか」であるなら、経営者のような大局的な視野や発想が、営業マンに新たな価値観を生み出すことと思う。 

 狭く考えてしまうタイプの問題は、「マーケティングとはこうあるべき」といった教科書的なセオリーに依存しすぎる危険性をはらむことだ。3CやSTP、4Pや定性・定量など、ベーシックな考え方を理解しておくことに損はないが、ややもすると机上の空論になることがある。ビジネスはセオリー通りにはいかないコトの方が多く、場数を踏み、経験を蓄えることの方が真のビジネス力は付くだろう。

 みんながセオリー通りのマーケティングをやっていたらどうなるのか? 似たような戦略ばかりが世にはびこることにはならないだろうか? 重要なのはベーシックな理論を抑えつつ、そこから独自性を発揮すること。そもそも「どうやったら最もよく売れるか」ということを日々真摯(しんし)に突き詰めたなら、自然とわきあがってくる発想が、結果としてマーケティングのセオリーであったということも多い。

 冒頭でも述べた通り、ジャニーズ事務所にマーケティング部門があるのかないのか、それは知らない。ジャニーズに良くない噂が存在することも知っている。それでもなお、こう思う。実績としてジャニーズは商品戦略において成功を収め、自社が動きやすいよう業界でのプレゼンスを最大限に高め、その結果として、男性アイドルの活躍の場を自ら創出してきた。これって、「マーケティングの最終目標なんじゃないの?」と思うのだ。

 マーケティングは、学んでもいいし、学ばなくてもいい。ただし、マーケティングの巧拙が、企業の命運を大きく変える。そして、「優秀な経営者ほど、そもそもセオリー通りのマーケティングなどは学んでいないだろう」と思う。

※この記事は、誠ブログ光GENJIは不運だった・・・。 ジャニーズから学ぶ「マーケティング的発想」」より転載しています。

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