こんな経営者が、若い人を使い捨てにしている吉田典史の時事日想(1/4 ページ)

» 2010年12月10日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 経営規模にこだわることなく、会社を選ぶ学生が増えているという。毎日コミュニケーションズが最近まとめた「2012年卒マイコミ学生就職モニター調査 10月の活動状況」によると、学生の大企業志向は2年連続で減少している。こうした動きを受けて有識者の中には「中小やベンチャー企業に行くと、大企業で得られないやりがいを感じることができる」と後押しする人も現れた。

(出典:毎日コミュニケーションズ)

 私は、その立場に与しない。メディアが「こういう学生を“いいカモ”にする経営者がいる」といったことを伝えないのは問題だ。この事実を覆い隠して「中小やベンチャー企業に行けばやりがいのある仕事ができる。だから学生よ、規模にこだわるな」とはとても言えない。

若い奴らの98%は甘ったれ

 3年前、ビジネス雑誌の取材で社員20人ほどの人材コンサルティング会社を取材した。年間売上は3億円、創業6年目のベンチャー企業だ。経営者は、30代半ばの男性。印象に残っている言葉はこのようなものだった。

 「『会社が悪い』『上司がダメだ』と言っている若い奴らの98%は甘ったれ。給料分を稼ぐことができないのに、批判をするな。うちにも数人いたが、辞めさせた」――。

 実は、この経営者も元“甘ったれ”だ。本人に聞くと、都内の私立大学を卒業後、7〜8年で4〜5つの会社を変わった。退職する理由は、そのほとんどが「上司が自分を認めない」というもの。部下が上司を批判することが「甘え」ならば、彼自身も会社員のころに「甘えていた」と言える。つまり、上司を批判するいまの部下は、かつての自分なのである。

 このことを問い掛けると、私をにらみつけた。会社員のころ、このように意にそぐわないことがあると、きっと「上司が悪い」と怒って退職したのだろう。経営者である今は文句を言う社員を辞めさせている。それは、自らが証言する通りである。要するにこの人は自己中心的な考えなのだ。自分の上司への批判は許される。しかし、部下が自分を批判することは許さない。

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