マスターブレンダーに聞く、シーバスリーガルとの付き合い方(1/2 ページ)

» 2010年12月01日 20時51分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]
シーバスリーガル コリン・スコット(Colin Scott)氏

 10月8日、「シーバスリーガル25年」が発売された。“マスター・オブ・シーバス”と呼ばれるブレンデッドスコッチウイスキーの国内登場にあわせ、マスターブレンダーのコリン・スコット(Colin Scott)氏が来日。「マスターブレンダーの仕事とは何か」――同氏に話を聞く機会を得た。

 場所は、コンラッド東京にあるレストラン「ゴードン・ラムゼイ」。伝統的に、食前酒・食後酒として楽しまれているウイスキーでもあり、メニューとのマッチングは考えられていないと伝えられていたが、少し甘めな味付けのディナーをソーダ割りにしたシーバスリーガル12年、水割りにしたシーバスリーガル18年、そしてストレートの25年で楽しんだ。

 飲み比べてみると、それぞれに違った顔を見せるシーバスリーガルのテイストに驚きつつ、このような味わいを生み出すマスターブレンダーに「シーバスリーガルとの付き合い方」を聞いた。


味わいをデザインし、それをずっとキープする

 「マスターブレンダーの仕事、それは大きく2つ。1つ目は、これから生み出すウイスキーの味を想像し、そのための公式(レシピ)を導き出すこと。2つ目は、それをいつまでもキープし続けること。これさえできれば、あとは若手に任せて、こうやって日本に遊びに来られます(笑)」

 冗談めかしてコリン氏はいうが、これは大変なことだ。シーバスリーガルのようなブレンデッドウイスキーでは、一般的に大麦麦芽を原料とするモルトウイスキーと、穀物(麦、トウモロコシなど)を主原料とするグレーンウイスキーを文字どおりブレンドする。

 シーバスリーガルを展開するシーバスブラザーズだけでも13カ所のウイスキー蒸留所を所有しているが、ブレンドには30〜50種類のウイスキーを、ほかの蒸留所と交換したり、買い入れたりしながら使う。交通手段が発達した今日であればいざしらず、ブレンデッドウイスキーが登場し始めた1840年ごろでは、集められるウイスキーは必然的に近所のものとなる。それが、伝統や地域ごとの性格の違いにつながった。

 シーバスリーガルのキーモルトは、ハイランド地方東部のスペイサイドにある「ストラスアイラ蒸留所」で作られたもの。フルーティでフローラルな香りと、樽熟成由来のナッティでドライな味わいが特徴だ。

 ブレンドのためのレシピは1920年ごろのものから保管されているというが、仮に1909年に登場した最初の「シーバスリーガル」のレシピが残っていたとしても、そのままでは同じものを作れないという。

 「ブレンドするための原酒の味わいは、同じ蒸留所のものであっても毎年変わります。去年使った原酒の樽を使い切ってしまったということも、しばしばあり得ます。それでもシーバスリーガルが同じ味わいになるようにブレンドするのが腕の見せどころ。時代の流行が変化したとしても、これは不変なのです」

マスターブレンダーになるには?

 ブレンドするウイスキーの味わいを決める最高責任者であるマスターブレンダー。ブレンダーになるためには、特別な味覚や臭覚を持っていなければいけないのだろうか?

 「ブレンダーの味覚や臭覚は、定期的にテストされます。ですが、特別なセンスを持っている必要はありません。ブレンダーになるには10年近い時間をかけてトレーニングします。だから、せっかちな人はブレンダーになれないでしょう」

 スコット氏は、3代にわたってウイスキーつくりにたずさわる家系に生まれ、オークニー蒸留所の中で育った。1973年にシーバスブラザーズに入社し、前任のマスターブレンダーだったシミー・ラング氏にブレンディングを学んだ。1989年にマスターブレンダーに就任し、1997年にシーバスリーガル18年を誕生させた。これは、18年以上熟成させたモルトウイスキー20種類以上をブレンドしたウイスキーで、同氏のお気に入りだという。

 ちなみに、ウイスキーの名前に付く12年や18年、25年という数字は、ブレンドに使ったウイスキーの熟成期間に由来するが、それは最低年数を表している。だから、シーバスリーガル25年には、25年目のウイスキーも含まれているが、30年モノ、40年モノといった貴重なウイスキーもブレンドされるという。

シーバスリーガル
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