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» 2010年11月25日 08時00分 UPDATE

鈴木敏夫プロデューサーが語る、スタジオジブリ作品の創り方(前編) (1/5)

スタジオジブリ作品のプロデューサーとして、さまざまなヒット映画を手がけてきた鈴木敏夫氏。鈴木氏はその日本アニメへの貢献が認められ、ASIAGRAPH2010で創賞を受賞。贈賞式の後に行われたシンポジウムで、スタジオジブリ作品制作の裏側を語った。

[堀内彰宏,Business Media 誠]

 今夏の映画シーンをディズニーの『トイ・ストーリー3』とともに盛り上げた、スタジオジブリの『借りぐらしのアリエッティ』。今回は宮崎駿氏が監督を退き、若手の米林宏昌氏が監督を務めたにもかかわらず、これまでのスタジオジブリ作品に勝るとも劣らない興行成績を記録している。

 公開すれば必ずと言っていいほどヒットする、スタジオジブリの映画作品。しかし、その歩みは最初から順調だったわけではない。『天空の城ラピュタ』や『となりのトトロ』など、スタジオジブリ初期の作品は評価こそ高かったもの、興行的には苦戦を強いられていた。

 そんなスタジオジブリを救ったのが、『魔女の宅急便』制作の際に正式に加わった鈴木敏夫氏の存在である。鈴木氏は日本テレビとの提携などを推進したことによって『魔女の宅急便』を興行的に成功させ、以降もスタジオジブリ作品のプロデューサーとして制作や宣伝に関わり、現在にまで続くスタジオジブリブランドの確立に大きく貢献した。

 ASIAGRAPH2010で日本のアニメーションや文化への功績が認められ、創(つむぎ)賞を受賞した鈴木氏。贈賞式の後に行われたシンポジウムでは、フリーアナウンサーの西村知江子氏が聞き手となり、スタジオジブリ作品制作の裏側が語られた。

ah_suzuki1.jpg 創賞授賞式での鈴木敏夫氏

『借りぐらしのアリエッティ』はこうして作られた

ah_suzuki2.jpg フリーアナウンサーの西村知江子氏

西村 まず初歩的な質問で申しわけないのですが、鈴木さんはプロデューサーとしてどのような仕事をされているのでしょうか?

鈴木 最初は企画ですね。何をやるか。これを主に宮崎駿と話し合って決まったら、次は誰をメインスタッフにするかを決めます。ここはとても大事です。というのは、同じ企画をやるにしても、スタッフによって期間と予算が変わってくるんです。

 「どんなスタッフが有能か?」についてはいろんな観点があると思いますが、有能な人ほど時間とお金を使うのが得意であるとは言えます。無能だとお金を使わないんです。だから、あっという間に作りたい時は、才能がない人を選ぶのがいいんです。才能がないと、どこにお金を使ったらいいか分からないですからね。

 僕はよくそういうことを言うのですが、その点から見ると映画は2種類しかありません。映画にはストーリーが伴うわけですが、ストーリーが単純で表現が複雑という作品はお金がかかります。逆に言うと、ストーリーが複雑で表現が単純という作品はお金がかからないんです。そこら辺を見ていけるかどうかがプロデューサーの大きな条件で、だからスタッフをどうするかが大きなポイントになりますね。

 そして、作り上げたものを世の中に出すための宣伝という仕事が待っているし、興行という仕事も待っています。また、日本公開の後、おかげさまで海外からいろんな引きがあるので、その仕事もやっていくと。大きく言って、そういう仕事をやっていますね。

西村 今回は『借りぐらしのアリエッティ』をモデルとして、作品ができるまでを教えていただければと思います。『借りぐらしのアリエッティ』はどなたの企画だったのですか?

ah_suzuki3.jpg 『借りぐらしのアリエッティ』公式Webサイト

鈴木 これは宮崎駿が言い出しましたね。メアリー・ノートンさんの原作(『床下の小人たち』)があるのですが。

 こういうのはざっくばらんに話した方がいいと思うのですが、僕は本当は『ぼくと「ジョージ」』という外国作品をやりたかったのです。でも、宮崎駿という人は、良くも悪くも誰かが言い出した企画に乗っかるのがあまり好きではないんです。というか、それだと自分のやる気が出ない。

 でも、そうはいっても、なかなか企画がなかったので、実は『ぼくと「ジョージ」』で話は進んでいたんです。しかし、そんなある日、彼が思いついたんですよね。「このままいったら『ぼくと「ジョージ」』をやらないといけない」という切羽詰まってきた時に、それを全部ひっくり返すんです。

 それで突然、「鈴木さん、アリエッティをやろう」と言い出したんです。うれしそうなんですよね、思いついたから。もう子どもみたいなんですよ。そうなると、何か体中からいろんなものがわき出てくるんですよね、とにかく負けず嫌いですから。映画の企画にしろ、作るにしろ、負けず嫌いって大事な要素で、そうなるといろんなアドレナリンが出てきて、「すぐにやりたい」という感じでした。

 (「やろう」と言ったものの、原作を)読み直しているわけではないんですよ。何しろアリエッティの企画は、高畑勲と宮崎駿の2人が40数年前に「これをやりたい!」と考えたものだったので。それを思い出したんですよね。

西村 『ぼくと「ジョージ」』をやりたくないがために。

鈴木 そうです。そうすると「あんたが言い出したんだからね。いろいろ考えてよ」となるわけです。僕も『ぼくと「ジョージ」』をずっとやってきて、こうやったらできるとか考えているわけです。それを突然ひっくり返されるというのは面白くないわけです。

 32年も一緒にやっているので、マトモに喧嘩するのはつまらないですよね。だから、別の形で喧嘩するんです。別の形というのは、「宮さん(宮崎駿)が言い出したんだから、シナリオは宮さんが書いたらいいですよね」とかね。言い出しっぺなんだから、その責任も取れと。そうは簡単にいかなかったですが、そういうことはありますよね。

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