コラム
» 2010年10月11日 04時00分 UPDATE

ちきりんの“社会派”で行こう!:“こだわり”があなたの判断を誤らせる (1/2)

大学時代の授業で「人は“こだわり”があると考えが偏向し、中立的な予測ができなくなる」と学んだちきりんさん。中立的な立場から、ものごとを考えるにはどうすればいいかについて考察します。

[ちきりん,Chikirinの日記]

「ちきりんの“社会派”で行こう!」とは?

はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん(Twitter:@InsideCHIKIRIN)。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。

※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年5月23日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。


 大学時代に授業で聞いたことで、今でも印象に残っていることがあります。社会学の科目で、テーマは「未来予測」でした。

 そこで「未来予測が当たらない最大の理由は、予測者が未来に対して“こだわり”を持っているからだ。人は“こだわり”があると考えが偏向し、中立的な予測ができなくなる」という考えを学んだのです。

 考えてみれば当然のことです。巨人の熱烈なファンには、今年、野球でどこが優勝するか正しく予測できないでしょう。巨人にぜひ勝ってほしいという“こだわり”のために、客観的な戦力判断ができなくなるからです。同じように「親には自分の子どもの実力が客観的に判断できない」こともよくありますよね。

 しかも、実は自分が直接関係しなくても“こだわり”が出てしまう場合もあります。例えば、「株式投資をしていない人なら、こだわりがないから株価が予測できるだろう」かというと、実はそうでもありません。というのも、株式投資をやっていない人でも「ほかの人が株式投資で大きくもうけたら悔しい」と考える人もいます。すると、どうしても「株価なんて下がればいいのだ!」という“こだわり”ができてしまい、本人は投資をしていなくても、予測が偏向してしまうのです。

自分のことが一番、客観的に判断できない

 さて、みなさんの一番“こだわり”があるものは何ですか?

 普通は「自分」か「自分の会社」、そして「子ども」や「家族」ですよね。この意味するところは、「自分にとってすごく大切なものについて、強いこだわりがあるために正しく判断できない」ということです。これはちょっとしたパラドックスです。

 人生には進学や結婚、就職や転職などさまざまな決断点があります。そのたびに「こうすべきじゃないか」とか「私はこういう性格だから」と人は真剣に考えます。時間をかけ、情報を集めて分析し、慎重に判断しようとする。でも間違ってしまうんです。なぜなら自分は自分の人生に強いこだわりがあるため、客観的な判断ができないからです。

 つまり、自分の人生を自分で選択するのは、わざわざ「オレは巨人の大ファンだ!」という人を呼んできて、「来年の優勝チームはどこだと思いますか?」と聞くのと同じくらい馬鹿げた方法だというわけです。

 そこで当時、ちきりんは「何とか、こだわりを捨てるスキルを身に付けられないか?」と考えました。

 もちろん、自分へのこだわりを完全に捨てるのは無理です。誰でも自分のことがかわいいし、自分の家族は(他人の家族より)大事です。それに、こだわりのない人生なんてつまらないですよね。食べ物や着るモノや趣味や、いろんなことにこだわりを持つからこそ人生を楽しめるわけですから。

 ただ、何か大事な決断を迫られた時にだけでも「意識的にこだわりを排除して考えるスキル」が習得できれば、自分にとって大事なものについても客観的な予測ができるようになるのではないか、と考えたのです。

 そこで練習として「外国人になったつもりで、日本の将来予測をする」ということを試みました。その際、中国人や韓国人になりきっても日本へのこだわりが残りそうだったので、あまり関係のなさそうな「トルコ人」になったつもりで考えてみようと思いました。

 そして、まずは頭の中で「私はトルコ人だ、トルコ人だ」と何度も言い聞かせ……、すっかりトルコ人のつもりになってから「さて、日本の将来はどうなるか?」と考える。ということをやってみたのですが……無理でした。何の考えも浮かんできませんでした。

 このように“こだわり”を持てば持つほど、世の中が見えにくくなるのですが、一方でその“こだわり”を捨てるのはとても難しいことなのです。

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