“こだわり”があなたの判断を誤らせるちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)

» 2010年10月11日 04時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
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こだわりの対象との距離

 下記は、人生の中で重要な「こだわりの対象」となりうるものを「自分からの距離」によって整理したものです。

1.距離ゼロ(例:自分の人生へのこだわり)

2.短距離(例:自分の子供の人生へのこだわり)

3.中距離(例:日本の教育制度についてのこだわり)

4.長距離(例:世界平和に関するこだわり)

 人がこだわりをもつ領域は年をとれば変化しますが、こだわりの対象までの距離が長くなる方向に変わる人と、短くなる方向に変わる人がいます。

 こだわりの対象までの距離が年を経るにつれ長くなるタイプとは、

 (1)若いころに「オレは金持ちになりたい!」と起業、(2)そのうち「家族に何不自由のない生活をさせてやる」「オレの息子には最高の教育を!」と仕事に邁進(まいしん)し、(3)事業が大きくなり安定すると「日本はこのままじゃダメだ!」と感じて積極的に社会問題に関わりを持ち始め、(4)最後は「世界平和に貢献できる人を育てたい」と、留学生やNPOの支援、若手政治家の育成に乗り出す、というような感じです。

 一方、こだわりの対象までの距離が短くなる人とは、

 (1)「世界に貢献したい!」「ビッグなことをやるんだ!」という思いとともに若いころに世界放浪、(2)帰国後に世界と比べておかしな日本に対して「日本の市場を変革する!」と意気込み、関連分野で起業、(3)しかし家族ができると「家族こそ自分にとって最も大事なものだと気がついた」と“家族派”に転じ、(4)晩年は「永久に死にたくない!」「オレをずっと大事にしてくれる後継者を次の社長にしたい」と思い始める、といったように最後は自分のエゴに戻ってしまう人です。

 こだわりを持つ対象を遠くに置けば置くほど、そのこだわりの力は分散してしまい、たいした影響力を及ぼすことはできなくなります。しかし、こだわりを持つ対象が身近で小さいものだと、強いこだわりによって細部までコントロールできてしまいます。

 例えば「日本の●●業界を変えるぞ!」と言っていても、業界内の企業やそこで働く人を意のままに動かしたりはできません。しかし自分の会社なら後継者は自由に選べますし、親であれば子どものキャリア選択には半強制的な影響力を持てるでしょう。

 近い狭い範囲のことにこだわりを持ちすぎると、影響力が大きすぎて、間違いが起こりやすくなるもの。しかも、こだわりが強い人はエネルギーにあふれており、元気で頑固で力を持っています。その力が小さなモノに向かうと、ものすごく大きく間違ってしまいます。

 したがって、自分が力を持てば持つほど、成功すればするほど、できるだけ遠くにある、広い範囲のことにこだわりの対象を移していくべきなのです。そうすれば、少々のこだわりでは間違いが起こったりはしなくなります。

 昔、ちきりんは「大事なものへのこだわりを捨てて考えるスキルが習得できないか?」と考え、失敗しました。でももう1つ、失敗を避ける方法があったのです。それは自分のこだわりの対象を、できるだけ自分から遠いところに持っていくという方法です。

 自分の人生より家族の人生、家族のことより日本全体のこと、日本だけではなく世界の……というようにこだわりの対象を遠くしていけば、自分が少々こだわりを持っても、それらを支配していまうことはできません。またそれにより、「身近なことへのこだわり」を多少は減らせるので、自分にとっての判断が少しは客観的になりうるのです。

 「判断を誤らせるもの=自分の大事なものへの強すぎる思い」ということなのであれば、自分について、自分の大事なものについても、適度に距離をとれるように、遠いことに“こだわり”を持つようにする、というのも1つの方法なのかもしれません。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN

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