桃太郎の鬼ヶ島にインストールされた現代アート:瀬戸内芸術祭(1/3 ページ)

» 2010年09月21日 21時16分 公開
[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

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※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 女木島の中心からバスで10分程度山を登ると、鬼の洞窟と呼ばれる「鬼ヶ島大洞窟」。ここは、通常は観光地として親しまれているところで、桃太郎伝説が伝えられる地だ。全長約400メートル、面積は約4000平方メートルの洞窟である。夏でも冬でも洞窟の中は摂氏15度。ひとときの涼をもたらしてくれるが、少し肌寒くも感じられる。

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 この洞窟は人工で掘られたもので、岩壁を見ると削った跡が分かる。鬼が住んでいて、桃太郎が鬼退治にやってきたと伝えられるが、海賊が使っていたという説もある。ひんやりとした洞窟の中を進んでいくと作品に遭遇する。サンジャ・サソの「鬼合戦、あるいは裸の桃の勝利」だ。

エキサイトイズム 「鬼合戦、あるいは裸の桃の勝利」サンジャ・サソ

 サンジャ・サソはクロアチアのアーティスト。真鍮のワイヤーで網目状に組まれた人体が、宙に浮いたようなかたちで展示されている。暗がりのなかに浮かぶワイヤーの彫刻は、鬼のいけにえとなった女性なのだろうか。人体のところどころが破れており、鬼による虐待を連想させる。洞窟という非日常の空間神話の世界に浸るのも悪くない。

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 鬼ヶ島の洞窟を出て次の作品、ロルフ・ユリアスの「緑の音楽」へ。歩けど歩けど、なかなか作品が見つからない。と思ったら、音が聴こえてきた。それが作品である。

エキサイトイズム 「緑の音楽」ロルフ・ユリアス

 ロルフ・ユリアスはドイツのサウンド・アート界のパイオニア的存在。日常の音をサンプリングし、余計な要素を取り除きミニマルな形で音を立体的に構成し空間を作り上げる。今回は、島のさまざまな場所で採集した音を森の中で再現している。目で見る作品ばかりの中で、耳で感じる作品は新鮮な驚きを与えてくれた。

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