インタビュー
» 2010年09月10日 18時00分 UPDATE

「買いたい」と「買ってよかった」をつなげ――キヤノン「PIXUS」デザイナーに聞く(後編) (1/2)

消費者がプリンタを購入するとき、商品の選定には性能や価格などを重視することが多い。しかし、カタログだけでは伝えられない「ほしい」という気持ちを喚起させるのがプロダクトデザインの力だ。

[岡田大助,Business Media 誠]

 2010年9月9日に発売されたインクジェットプリンタ「PIXUS」2010年モデル。黒鏡面のボックス型の筐体は、非常にシンプルなデザインだ。存在感を残しつつも、インテリアに溶け込むバランスを追い求めたPIXUSのデザイナーに、その開発を振り返ってもらった。

 インテリアイズムについて紹介した前編に引き続き、犬飼義典氏(総合デザインセンター プロダクト第二デザイン部長)と、島村順一郎氏(同プロダクト22デザイン室専任主任)にお話をうかがう。

PIXUS (左から)犬飼義典氏と島村順一郎氏

「買いたい」と「買ってよかった」の断絶

 キヤノンでは、新製品の開発にあたって匿名でのユーザーインタビューを行うという。PIXUSの2010年モデルでも、男女別、年代別に8グループのプリンタユーザーを集め、さまざまな意見を聞き取った。

 「当然ですが、キヤノンのプリンタに対する辛らつな意見もあります。コンセプトもデザインも大きく変えた機種について『あんまり変わってないよね』と指摘されたときは、担当デザイナーとしてショックを受けたものです。ですが、われわれが狙っている効果のうち、どの部分がユーザーにちゃんと伝わっていて、どの部分が伝わりきらなかったのかを把握できたのは非常に大きい」(島村氏)

 毎年、さまざまな新機能が追加されるインクジェットプリンタの世界だが、それが商品である以上、ユーザーが買いたいと思うような魅力を感じさせなければならない。「(期待していなかったけど)買ってみたら、意外と良かった」ということもあるかもしれないが、「買いたい」と「使ってみたら良かった」がつながってなければダメなのだ。

キヤノン 「やさしいシルバー」のCanon PIXUS MP640

 「2008年モデルの『やさしいシルバー』は、本当に家庭のインテリアになじむのか? ということを伝え切れなかった部分があったかもしれません。店頭で商品を初めて見た人が、自宅のインテリアとのマッチングまでイメージして『ほしい』と思えたのか。新PIXUSでは、この部分は狙っていかなければならないと思っています」(犬飼氏)

 「プリンタの機能や使い勝手など、細かい改良を積み上げていくことは重要です。ですが、インタビューの結果、それだけでは商品の魅力が伝わらないということを強く意識させられました。新しい魅力を持った商品だということを、店頭でもWeb上でもきちんと伝えるのもデザインの役割なんだ、と」(島村氏)

 インタビューでは、プリンタを家庭内のどこに設置して利用しているのかを知るために、写真と間取りを持参してもらった。2008年の調査では、その2年前の調査に比べてプリンタがリビングで使われているケースが増えていたという。

 「『パソコンコーナー』から、家族みんなで使うリビングに置いている人が目に見えて多くなりました。デザインチームとしては、インテリアイズムを進めてきた結果が間違っていなかったとうれしかった。でも、なかには普段押し入れにしまっていて、使うときだけピアノのいすの上に置くというユーザーさんもいらして、想像を超えた使い方をされると、それはそれで新製品のヒントになります」(島村氏)

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