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» 2010年09月01日 08時00分 UPDATE

それゆけ! カナモリさん:ハデハデ靴・メレルの「大ヒットのヒミツ」と「挑戦」 (1/2)

山ガールの出現とともに、若者の間で人気を集めているアウトドアシューズがある。黄色や青などカラフルな色が特徴の「メレル」だ。なぜ、メレルはヒットしたのだろうか。

[金森努,GLOBIS.JP]
GLOBIS.JP

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2010年8月27日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 「自社の製品はどのような価値を持っているのか」を冷静に把握することは重要だ。それが、「誰から、どのように評価されるのか」を考えることは、さらに重要だ。

 「カラーバリエーションはマーケティングのどん詰り」などと言われることがある。すなわち、製品がコモディティー化して差別化要素が出尽くして、カラーバリエーションの数を増やすぐらいしか手がなくなっている状態をいう。

 例えば、「ノートPC」を考えてみよう。廉価なネットブックが登場し、さらにiPadに代表されるタブレット端末にその座を奪われつつある、成熟期、もしくは衰退期にさしかかった製品だ。量販店の店頭を見れば、その筐体にさまざまなカラーバリエーションが展開されていることが分かる。バリエーションを増やすということは、在庫・売れ残りのリスクがその数だけ高まることを意味している。しかし、もはや色ぐらいしか差別化ポイントを構築できないため、仕方なしにメーカーは展開しているのだ。

 8月23日付日経MJファッション&リビング欄の連載コラム「ブランド深化論」。「メレル(丸紅フットウェア)派手な色の靴 若者に浸透」という記事が掲載された。

 メレルは来年30周年を迎える米国のアウトドアシューズブランドで、1998年に丸紅が独占輸入権を獲得。2008年に、従来の黒やオリーブ、黄色の3色に加えて、緑や青などを加え、7色展開を始めたという。

 その製品がどのような価値を持っているのかという、価値構造を明確にするフレームワークが、フィリップ・コトラーの製品特性モデルである。製品の持つ価値構造を3つのレベルに分解する。3層は中心から「中核」「実体」「付随機能」である。

 「中核」とは、顧客が製品やサービスの購入で手に入れたい価値だ。前述のノートPCで考えれば、基本機能である「ドキュメントの作成」「インターネットの利用」「持ち運べること」が相当する。「実体」は「中核」の価値を実現するために欠かせない、製品の特性を構成する価値である。「軽量さ」「バッテリーの稼働時間」「耐久性」などが相当する。「付随機能」は、製品の中核価値に直接的な影響は及ぼさないが、その存在によってより魅力が高まる価値である。「カラーバリエーション」がまさにそれだ。

 では、アウトドアシューズであれば、どうだろうか。靴としての基本機能である「足の保護」「歩きやすさ」が「中核」となる。従来メレルが持っていた「悪路でも滑りにくい」や「丈夫なこと」「防水機能(ゴアテックス)」などが「実体」。そして、普通に考えれば、カラーバリエーションはノートPCの場合と同じく「付随機能」となる。あれば差別化要素にはなるが、それがなくともアウトドアシューズとしての使用には耐えうるからだ。

 メレルの大ヒットのヒミツは、その価値構造を「獲得すべきターゲットに対してどのように訴求すべきなのか」を検討した点にある。

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