そんなにうらやましくない? 「社長公募」「新卒年収650万円」(1/2 ページ)

» 2010年08月30日 08時00分 公開
[増沢隆太,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)

RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。


 働く以上、給料が多くて困る人はいないでしょう。しかし給料は小遣いではありません。実は私のキャリアデザインの授業では「給料」と「小遣い」の違いについて、わざわざ時間を取って説明しています。この違いを理解できていない社会人はびっくりするぐらい多いと思うからです。

 サラリーマンであれば、普通は出世したくない人も、高給を欲しくない人同様いないことでしょう。しかし管理職になり、部下の管理、特に評価をしたことがあれば、「管理職」という立場が決してただイバっていればいいものではないことをご理解いただけると思います。これから管理職を目指すみなさんも、当たり前すぎて説明不要でしょうが、「楽あれば苦あり」「人間万事塞翁が馬」「権利と義務」が必ずともないます。

 年に1回程度、上司と面談して業績評価をする会社は多いと思います。そんな時に「どれだけ頑張ったか」をアピールしているのに、結局月給も、ボーナスもほとんど変わらなかった。下手すると下がった、などということがあるかもしれません。

 ここが「給料」と「小遣い」の違いなのです。

 お父さんやお母さんは、恐らく「頑張った」ことについてお小遣いをくれたかもしれません。しかし、上司はお父さんでもお母さんでもありません。ただのサラリーマンです(完全オーナー企業で、すべてを代表1人で決済できる会社だけはもしかすると違うかも……)。ボーナスを含め、給料は「上司個人のお金」ではなく、「会社のお金」です。会社のお金である以上、それを使うのには会社の許可がいります。だから「頑張った」アピールでは会社の許可が取れないのです。

 「どう頑張って、どんな成果をもたらしたか」以外では、会社のお金を使うことは普通は許されません。その説得をできるかどうかで給料やボーナスは決まっていきます。この不景気です。「頑張るのは当然、頑張らない人はいらない」と言われてしまうのではないでしょうか。そんな環境でいくら「頑張りました」アピールをしても意味がないのです。極論すれば「頑張らなくても、成果が出た」でも評価される可能性は高いと言えるでしょう。もちろん単なるラッキーだけで評価されるほどの莫大な成果があった、という1回限りかも知れませんが。

 一方、小遣いは給料ではありません。だからまったく仕事をしていなかった小学生の私もパパから手渡しで小遣いをもらうことが出来ました。「仕事」とは上記のような、何らかの成果や家計における生産性を意味します。子どもとして勉強を頑張ることは、将来のキャリア構築につながり、親子であればゆくゆくは親にもそのリターンがある「かも」しれないという、細い可能性では生産性かもしれないですが、やはり勉強は自分のためであり、キャリアの視点からは仕事とは呼ぶことは出来ないでしょう。

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