六本木の超高層ビルで自然を感じる「ネイチャー・センス展」(1/4 ページ)

» 2010年08月16日 18時55分 公開
[草野恵子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム

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※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 うだるような暑さが続く東京・六本木で、涼感たっぷりの展覧会が行われている。東京・六本木の森美術館で開催中の「ネイチャー・センス展」だ。英語のタイトルでは「SENSING NATURE」と題した展覧会、六本木の超高層ビルの上で“自然を感じる”とはいったいどんな試みなのだろうか。

 「ネイチャー・センス展」は、異なるジャンルで活躍する3人の日本人アーティスト、吉岡徳仁、篠田太郎、栗林隆を起用した企画展だ。2010年、森美術館は「日本を再定義する」という年間テーマを掲げているが、今回の展覧会では、四季のはっきりとした日本に住む人々の“自然を知覚する力”、文化的に継承される独自の自然観を見つめ直すことがテーマだ。

 選ばれた3人は、森美術館の広い空間を縦横無尽に使いこなしながら、単に自然を再現するということではなく、「自然をどう捉えるのか」をそれぞれの視点から追求する展示を競っている。

エキサイトイズム 吉岡徳仁「スノー」2010年

 展覧会冒頭を飾るのは、吉岡徳仁氏の「スノー」。すでにエキサイトイズムでは先行してその概要をお伝えしているが、実際にその実物に対峙すると歓声をあげたくなるようなスケール感だ。14×6×5メートル(横×高さ×奥行き)の巨大な空間の中で、雪のような羽毛が舞い上がるさまは圧巻のひと言。この作品は、創業444年を迎える布団の老舗メーカー、西川産業から羽毛数百キログラムを提供されて実現したもの。近づいて観てみると、羽毛の1つ1つは、まるでタンポポの綿帽子のようにも見えてくる。

エキサイトイズム 吉岡徳仁「スノー」2010年

 「雪にいちばん近い、空中に舞い上がる素材を探したときに、いちばん軽くて雪に近いものが“羽毛”だったんです。羽毛はタンポポの種(綿毛)にも似ています。空中に浮遊するようなものは、不思議とこういう形になってるんですよね」(吉岡徳仁氏)

 風をおこすファン2機を使って羽毛を定期的に舞い上がらせる「スノー」。ファンの回転の速度やタイミングについては、かなり入念に計算されて行われている。その結果、本作では自然の雄大な力を感じさせるようなダイナミックな”雪”を鑑賞することができる。

 吉岡徳仁氏は、近年アーティスティックなアプローチの作品を積極的に発表している。中でも、光学ガラスを使った一連の作品を、会場ではまとめて見ることができる。世界最大の光学ガラスのテーブル「ウォーターフォール」やベンチ「ウォーター・ブロック」がそれだ。

 光を受けることによって輝きを放つ、純度の高い一連の光学ガラス作品は、より明るい光に近づこうとする吉岡氏の意図を感じ取ることができる。

エキサイトイズム 吉岡徳仁「ライト」2010年

 さらに、1年かけて結晶を成長させた作品「ライト」も展示されている。結晶といえば、2008年、21_21 DESIGN SIGHTで行われた「セカンドネイチャー」展で公開された作品「ヴィーナス―結晶の椅子」を連想するが、今回の「ライト」はまったく別の技術を使って作られたもので、詳しくは企業秘密。その透明感はミステリアスでもある。

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