「ユングフラウヨッホ」とはユングフラウとメンヒの中間地点の地名である。ユングフラウヨッホ駅も地下に造られており、100メートルほどのトンネルを抜けて地表に出るとやっと氷河が現れる。
ここから見えるのはユングフラウフィルンと呼ばれる氷河で、長さはおよそ7キロ。氷河としては比較的小さく最大幅は2キロしかないが、氷河を見慣れない者にとっては十分な迫力だ。このユングフラウフィルンが終端で合流するアレッチ氷河はアルプス最大を誇り、長さ23.6キロ、総面積約120平方キロメートル、最も深い部分の氷厚は900メートル、水の総重量は270億トンになる。
しかしこのアレッチ氷河も縮小を続けており、多い年には120メートルも後退する。冬の降雪量や気温により縮小の長さは異なるが、記録の残るここ140年ほどは毎年例外なく縮小を続けている。
そもそも温暖化により氷河が縮小すると何が起こるのか。そして、そのことが地域住民の生活にどのような影響をもたらすのだろう。
まず、温暖化によって岩壁が崩れやすくなる。岩山は大量の地下水を含み温度の低いところは凍っているのだが、温暖化によってこれが融けて流れ出すと地質が脆くなり、あるとき巨大な崩落が起きる。岩山の麓(ふもと)にある家屋や道路が直接の危険にさらされるのはもちろん、人気のない奥地でも谷川の流れを変えて水をせき止め洪水を引き起こすかもしれない。
また、氷河は巨大な貯水池の役割も果たしているから、これが縮小すると結局は下流を流れる川の水量が減ってしまう。氷河が作り上げた数百メートルの岩壁から滝が流れ落ちる様子をよく目にするが、これらの水源も多くが氷河だ。滝があまりに高いため、水が途中で霧状に散ってしまう。
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