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» 2010年06月10日 08時00分 UPDATE

世界の90%の人たちを相手にするデザインとは? (5/5)

[上條桂子,エキサイトイズム]
エキサイトイズム
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 「Antivirus(アンチウイルス)」という名のプロダクト。これはその名と写真を見れば分かるだろうが、空き缶のフタに取り付けて使用済みの注射針を捨てるというもの。このプロダクトをデザインしたのは、ベトナム難民キャンプに住んだ経験のあるハン・ファム氏だ。

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 幼い頃に難民キャンプで受けた予防接種で破傷風にかかった経験があり、その後デンマークのコールディングデザイン大学でデザインを学んだ際に、自分のような第3世界で暮らす人びとに対し「デザイナーとしてできること」を考え、このようなプロダクトを生み出す結果となった。

 どこでも手に入る空き缶を使い(全世界の飲料用缶の約90%に合うサイズとなっている)、使用した針に触れることなく缶に捨てられ、穴には子どもが手をいれたりできないよう配慮されている。現在この製品については、販売・流通のパートナーを探しているという。

 今回紹介したのは展覧会のごく一部なので、ぜひ2つの会場両方に足を運んでご覧いただきたい。世界の10%という先進国のデザイナーの人びとは、多くが消費に結びつくような、魅力的で機能的なデザインをする。それは日々の問題を解決するため、生活を豊かにするために必要なこと。

 しかし、今回の展示を見ると、どうやらデザイナーの役割はそれだけではなく、もっともっと大きな可能性があることが分かる。そして、発展途上国で求められているのは、一時的にお腹を満たしたり問題を解決するプロダクトではなく、プロダクトを通して新しい雇用を創出したり、自立した生活ができるような知恵や技術を提供することなのだ。

 世界の人たちが抱えている問題は、ともすると大き過ぎて誰か1人が動いてもどうにもならないと考えてしまう人もいるかもしれない。しかし、誰かがその一歩を踏み出すことで、小さな問題の解決への糸口が見つかることもある。全体を見て感じたのは、まだまだ日本の企業や教育機関の参画が少ないということ。この展覧会を見て実情を知り、自分たちができることを考えるというだけでも大きな一歩となるだろう。

 アクシスギャラリーの入り口のステートメントにこんな言葉があったので最後に紹介したい。

 「デザインは、人間の本当の要求にこたえるような道具となるのでなければならない」(「生きのびるためのデザイン」ヴィクター・パパネック著)。2会場とも会期は13日まで。

世界を変えるデザイン展

東京ミッドタウン・デザインハブ 東京都港区赤坂9-7-1 ミッドタウン・タワー5階

開催中〜6月13日(日) open.11:00〜19:00、無料

アクシスギャラリー 東京都港区六本木5-17-1 アクシスビル4階

開催中〜6月13日(日) open.11:00〜20:00


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