コラム
» 2010年06月01日 08時00分 UPDATE

マーケティングは社内から――インサイドマーケティングのすすめ (1/2)

マーケティングというのは、原則として顧客(市場)に対する仕掛けを意味する。しかし、会社の外に対するメッセージや仕掛けに集中するあまり、社内への浸透と徹底におろそかになっている企業があまりにも多いと筆者は指摘する。

[猪口真,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:猪口真(いのぐち・まこと)

株式会社パトス代表取締役。


 最近、強く感じることがある。「顧客(市場)へのマーケティングに成功している会社は、社内に対するマーケティングを徹底している」ということだ。

 マーケティングというのは、原則として「顧客(市場)に対する仕掛け」を意味する。だが、会社の外に対するメッセージや仕掛けに集中するあまり、社内への浸透と徹底におろそかになっている企業はあまりにも多い。

 メディア環境が多様化し、顧客(非顧客も含む)との接点が拡大した現在、「マーケティングアクションがここ10年で数倍から10倍に増大した」と語るマーケティング担当者が多く、しかも、非常に短期的な費用対効果を期待される。さらに、ソーシャルメディアへの参入は、マーケティング担当者自らメディア化することとなるので、さらに多忙を極める。それゆえか、顧客への対応ばかりに気が移り、社内への啓蒙、共有といった、先に行わなければならないことがおろそかになってしまう。

 しかし、顧客への提案やPR、顧客との関係構築などに成功している会社は、むしろ、社内での戦略の浸透を徹底しているといえる。実際、アメリカマーケティング協会で、「マーケティングとは、顧客を創造し、伝達するため、そして組織とその利害関係者(顧客、株主、債権者、従業員、経営者、取引先、行政機関)に便益を与えるような方法で、顧客関係を確立するための1つの組織機能であり、一連の過程である」と20年ぶりに再定義された内容にあるように、そうした会社は「その組織と利害関係者」への施策に成功しているのだ。

なぜ社内向けの伝達や啓蒙がおろそかになっているのか

 このような社内向けの伝達や啓蒙がおろそかになっている原因は、マーケティング担当者の多忙さばかりにあるのではなく、現在の環境変化にもよる。

 1つ挙げられるのは、購買の意思決定要因が非常に複雑化してきているということ。

 高度成長時代のように単純に「そのモノが欲しい」というニーズだけではなく、現在ではその商品やサービスの背景にあるストーリーや付加価値を検討しながら、類似する多くのサービスの中から選択するというプロセスを経て購入する。しかも、ユーザーからの情報や評判、評価を簡単に手に入れることができるので、商品提供側が何を言おうが、顧客はあらゆる情報を仕入れることができる。そうなると従来のワンウェイ訴求型プロモーションだけでは、そうした商品やサービスの価値をプレゼンテーションして納得してもらうのは、非常に困難になる。

 もう1つは、作り手側のメッセージが高度化し、クオリティが上がれば上がるほど、実際に営業やサービスに相対する顧客はギャップを感じることになるということ。例えば、高度な専門知識と顧客本位のソリューション力をメディアやWebで訴求する金融機関や、地球環境と利便性を両立させる住まいを標榜するハウスメーカーなど、企業側が啓蒙すればするほど、実際の営業マンからの提案や対応との落差があまりに大きいと落胆してしまった人は少なくないだろう。

 弊社で、「本質的な経営理念やビジョン・戦略の現場への浸透」についてアンケート調査を行ったところ、次のような結果となった。

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 20%近い人が「興味がなく取り組む予定もない」と答えたことも驚くが、「成果が現れている」と答えた人も20%しかいない。

 マーケティング・調査や経営企画に「成果が出ている」という答えが多いのは納得できるが、現場で働く営業・販売部門における評価は低い。そして「危機感を感じている」「必要性は分かるが方策が分からない」層も約25%存在している。

 この結果を見ると明らかなように、問題なのはまず社内への浸透を課題だと認識していないことが1つ。そして、危機感や必要性を感じていながらも対応していなかったり、一応取り組んではいるものの成果がないとする人たちが約60%も存在するということだ。

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