金融規制強化を懸念、世界景気への波及を嫌気して売られる清水洋介の「日々是相場」朝刊(1/2 ページ)

» 2010年05月21日 08時31分 公開
[清水洋介,リテラ・クレア証券]

<NYダウ>10068.01▼376.36

<NASDAQ>2204.01▼94.36

<為替:NY終値>89.63-89.69

金融規制強化を懸念、信用収縮の世界景気への波及を嫌気して売られる

 欧州での金融不安、金融規制強化に加え、銀行税を提案する計画が浮上、信用収縮、リスク逃避の動きに拍車がかかり欧州株式が下落したこと、また、米国でも金融規制改革が強まるとの見方から朝から売り一辺倒、パニック的に売り急ぐ展開となりました。朝方発表された新規失業保険申請件数も予想を上回ったことで、雇用の悪化、欧州金融不安の世界的な広がりが世界景気回復の足を引っ張るとの見方もあり、売りに拍車をかける格好となりました。朝方からの売りが一段落した後は戻りかける場面もありましたが、最後は売り直されて大幅下落となりました。

 ギリシャ問題どころの騒ぎではなくなっています。ギリシャの財政規律の問題に端を発した金融市場の混乱も金融規制強化の流れで「リスクマネー」が収縮、一気にリスク回避の流れとなりました。好決算を発表した銘柄なども売られ、足元の業績動向を無視するかのように株式市場からの資金流出となりました。商品も為替も売られて債券だけが買われると言った状況で、円キャリー取引の解消もあって大きく円高となりました。

 個別には軒並み大幅下落となり、世界的な景気減速懸念からアルコアなどの素材株やキャタピラーやGE(ゼネラル・エレクトリック)といった景気敏感株が大きく下がり、金融規制強化を懸念してバンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェースといった銀行株など金融株も大きな下げとなりました。インテルやアップル、IBMといったハイテク銘柄も新興国景気まで影響が出てくるのではないかとの懸念から売られて大幅安、金価格も下落したことから、ニューモント・マイニングなど金鉱株、エクソン・モービルなど石油株も大幅安となりました。かろうじて、コカ・コーラやプロクター・アンド・ギャンブルなどディフェンシブ銘柄が下げ渋っています。引け後に好決算を発表したキャップやデルも時間外取引でも大幅安となっています。

本日の相場

日経平均

 昨日の日本市場は円高や米国株安を嫌気して売り先行となったものの底堅さも見られました。ただ、後場に入ってからは特に材料が出たわけでもないのですが、材料を探しては売り急ぐような展開で売りが嵩み一時日経平均は10000円を割り込む場面もあるなど大幅下落となりました。最後は何とか10000円を保ちましたが、TOPIXも節目と見られる900ポイントを割り込むなど地合いの悪さを示すような展開になりました。

 欧米株式が大幅安となったことや円高に大きく振れたことから、売り先行で下値を試す展開となりそうです。週末と言うこともあり、それでなくても買い手控え気分が強まりそうなところで世界的な金融不安が強まったことが、売り急ぐことになるのでしょう。週末ということで買戻しを考えていた向きも慌てて買い戻すこともないと思われ、米国市場が終わってからも円高が進む場面もあり、かなり大きな下げとなる可能性が高そうです。ディフェンシブ銘柄、為替の影響が海外動向の影響を受け難い銘柄に底堅さが見られるのかどうか、昨日の下落でどこまで織り込まれているのか、と言うところです。

 昨日はかろうじて引け値ベースでは心理的な節目と見られる10000円を保ちましたが、海外株安や円高を受けて、年初来安値水準である9900円水準やシカゴ市場(CME)の終値である9700円水準を目指すことになるのでしょう。下値の節目とすれば、それら加えて昨年10月の安値である9600円水準というところであり、いったんはその水準まででは下げ止まるものと思います。今回の世界市場の混乱で中国の金融引き締めや米国の「出口戦略」が遠のくとみられれば下げ渋る場面もあるものと思いますが、景気鈍化懸念が強まると昨年7月や11月の安値水準である9000円水準まで下落となってしまいそうです。

本日の注目点

◇4月の全国粗鋼生産(鉄鋼連盟)

◇白川日銀総裁会見

◇5月の独Ifo景況感指数

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