コラム
» 2010年05月20日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:iPad販売に見る、新世代の予約行列マーケティング (1/3)

iPadの米国での発売から1カ月。日本での発売日が5月28日と決まり、予約を5月10日から受け付けたが、注文が殺到したためにわずか3日で終了した。iPadが消費者の購買気分を盛り上げた背景には何があるのだろうか。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba」。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go


 5月12日水曜日、15時。ヨドバシカメラ秋葉原店にいた。いつ行っても店内アナウンスが大音響なので耳をふさぎたくなるが、この放送には耳をそばだてた。

「ご来店いただきまして、誠にあっりがとうございます! 本日15時30分をもちまして、iPadの予約お申し込みを終了させていただきま〜す!」

 え! もう終わり!? 予約を開始してから、まだ3日目ですよ。しかも、どうやらヨドバシカメラ全店で予約終了というアナウンス。ヨドバシカメラで終わりなら、ほかの量販店でも同じだろう。「まだ、予約申し込みの段階なのに……」と思いながら、PCサプライの品定めをしていると、2度目のアナウンス。

 「現在の予約お申し込みのお客さまをもちまして、iPadの予約受付を終了とさせていただきます」

 時計は15時半を指していた。

買うべきか買わざるべきか、3日間の攻防

 日本を始めとした9カ国でのiPadの予約開始のお知らせが発表されたのは、5月7日金曜日。実際に予約できるわずか3日前だった。買うべきか買わざるべきか、買うなら9つのタイプ(「Wi-Fi」「Wi-Fi+3G(プリペイドプラン利用)」「Wi-Fi+3G(データ定額プラン利用)」、それぞれ16/32/64GBのメモリ容量)のうちどれにするか、どこ(Apple Storeやソフトバンクショップ、量販店、オンラインなど)で買うか、の決断を土日で迫られた。

 もちろん、4月3日に米国で発売されてから、1カ月強あった上での“ハムレットの決断”だったので、心を決めていた人は多いだろうが。

ah_applestore.jpg 5月15日に申し込めば6月7日に出荷だった(Appleのオンラインストア、Wi-Fiモデルのみ)

 量販店チェーンでも、セレクトされた店舗でしか買えないiPad。しかも、予約しても「予約番号」はないという。そのため、5月28日の発売日当日に手にするには、再び並ぶ必要もあるかもしれない。

 殿様商売と揶揄(やゆ)され、独禁法違反まで取りざたされる(価格拘束さえなければ販売店限定は違法ではない)。だが、予約開始初日でも、行列待ち+手続き合わせてせいぜい2時間程度で予約完了。それでいて、わずか3日間で数万台の予約があったという。

 米国で予想を超える販売があったために供給が追いつかず、「事前予約」という手法が取られたのだろうが、「行列なしで購買心理をかきたてて、パブリシティも得る」という鮮やかな“予約マーケティング”事例となった。

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