かつて、ソニーのPS3の発売時には、ニューヨークで1週間も前から並ぶ人もおり、有楽町ビックカメラでは整列をめぐって騒然とした雰囲気にもなった。iPhone初期モデル発売時も、表参道で4日前から並んだ人もいた。そのたびに街頭整理が必要で、混乱リスクも高まり、コストもかさんだ。
デジタルガジェットに限らず、ドーナツやラーメン、テーマパークに銀行ATM、あたりを見回すと「人類みな行列民族」と呼びたくなるほど行列があるが、果たして人は行列好きなのだろうか? 行列要素を整理してみよう。
ATMや郵便局などの手続き型の行列で、終わるまで何分かかるかの情報が少なく、並んでももてなしはなく苦痛ばかり。行列全体や先端が見えず、ズルする人も出て怒りが増しがち。作業をわざと遅らせて並ばせる“悪魔のテクニック”を使う店は最悪だ。
テーマパークや映画など楽しいエンタメ型の行列で、「あと何分かかりますよ」という情報があり、水やお茶やドーナツのおもてなしもあったりする。供給者がお客さま体験を第一にするので、みんな“行列紳士”ばかりになる。
今回のiPadはどうだったのだろうか?
米国での先行発売から約1カ月。その間、「日本などでの発売は約1カ月遅れ」とアナウンスがあり、購買予備群の心を揺さぶった。そして、予約開始の知らせを出し、予約終了情報はギリギリまで与えずに購入心理を盛り上げた。
結果的に3日で予約は終了、実物をゲットするまで約15日間のワクワク期間を残した。期待盛り上げが30日間、購買行動が3日間、ワクワク心待ちが15日間。
予約ティーザー(じらし)マーケティング。どこまでAppleとソフトバンクが意図したかは別として、「予約したい」と思わせる時間が半分以上。予約受け付けはできるだけ短い期間におさえ、そして予約後は「まだか」を盛り上げて、発売日に提供する。時間の比率は、期待6:行動1:心待ち3、これが“予約心理の黄金比率”である。
行列から予約へ――売り手も買い手も変わりつつある。
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