閲覧注意! 「おもちゃのカンヅメ」の中身を公開する人々(1/2 ページ)

» 2010年04月06日 08時00分 公開
[中村修治,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:中村修治(なかむら・しゅうじ)

有限会社ペーパーカンパニー、株式会社キナックスホールディングスの代表取締役社長。昭和30年代後半、近江商人発祥の地で産まれる。立命館大学経済学部を卒業後、大手プロダクションへ入社。1994年に、企画会社ペーパーカンパニーを設立する。その後、年間150本近い企画書を夜な夜な書く生活を続けるうちに覚醒。たくさんの広告代理店やたくさんの企業の皆様と酔狂な関係を築き、皆様のお陰を持ちまして、現在に至る。そんな「全身企画屋」である。


 3月31日の「Google 急上昇ワード」のトップに「おもちゃのカンヅメ 中身」が輝いた。今週、「おもちゃのカンヅメ」が話題になったのには理由がある。テレビ朝日の人気番組「シルシルミシル」の特集で、森永製菓のお菓子が取り上げられたからだ。その中で、「森永製菓の歴史をすべて知る資料部のトップでさえ、チョコボールの名物懸賞である、おもちゃのカンヅメの中身は、知ることができない。そんな、おもちゃのカンヅメの中身は、トップシークレット中のトップシークレットだ」と放送されたからだ。

シルシルミシル(出典:テレビ朝日)

 それを見ていた視聴者がネットに飛びつくのは当然。「大人は夢がないなあ」と思いながらも、例に漏れず「おもちゃのカンヅメ 中身」と検索を実行してみた。

 すると、びっくり……。Googleで「おもちゃのカンヅメ 中身」と検索すると、日本語のページで 約6万700件がひっかかる。そして、その上位のほとんどは、当てた「おもちゃのカンヅメ」の中身を公開しているブログなのだ。ネットユーザーにとっては、トップシークレットでも何でもない状況になっている。

 ここからは、閲覧注意である。「子どものころからの夢を壊したくない」というカタクナなヒトは、クリックをおすすめしない。しかし、誘惑に駆られて見てしまっても大丈夫。そこにあるのは、森永製菓への淡い願いが、一方的にぶち壊されているひどい状況があるわけではない。

 Googleの検索で上位に位置するのは、「キョロちゃんグッズ おもちゃの缶詰大図鑑」「これがおもちゃのカンヅメの中身だ」「おもちゃのカンヅメ大公開」など。

 こうして、おもちゃのカンヅメの中身を公開する人々には、共通した流儀がある。

1.当てて届いたことを喜々として伝えている

2.中身については子どもだましと言いながらもほめている

3.何よりも「缶そのもの」を大写しにしている

 なぜ、そうなるのか……。それは、シークレットであることを暴くことが目的なのではなく、当たった喜びを見る人たちとシェアすることを目的にしているからである。

 そこには、「チョコボール愛」なるものが根底にあって、どのブログも、森永製菓にとっては良いプロモーションになっている。中身の詳細のことよりも、「おもちゃのカンヅメを手に入れて、それを公開している」姿勢に連帯感が生まれている。「おもちゃのカンヅメ」というプレゼント企画そのものがブランドになっているのだ。

 「おもちゃのカンヅメ」のプレゼントが始まったのは1969年。もう41年も続く伝説的な企画である。中身をトップシークレットにする姿勢も一貫して続いている。

 たかが、おもちゃである。たかが、懸賞の法的規制の枠内に収まるプレゼントである。されど、こどもの夢である。そこに手を抜かない森永製菓の愛は、インターネット全盛の世の中で中身がさらされることになっても、「おもちゃのカンヅメ」というブランドは違うスピードで拡がっている。

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