新たな時代に入る「FeliCaとおサイフケータイ」。次の注目分野は?神尾寿の時事日想・特別編(1/3 ページ)

» 2010年03月24日 18時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。

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 3月9日から12日まで、東京ビッグサイトでICカードの国際見本市「IC CARD WORLD 2010」が開催された。これは非接触ICFeliCa」や「NFC」を扱ったイベントとしては世界有数のものだ。今年は出展者数こそ景況悪化の影響で例年より少なかったものの、来場者は併設のリテールテック JAPAN 2010とあわせて4日間合計で15万4654人。前年の来場者数を2000人以上も上回った。

IC CARD WORLD 2010

 筆者は毎年、このIC CARD WORLDでワークショップのモデレーターを行うなどさまざまな形で参加しているが、その目から見ても、今年は活況だった。ブースによっては人混みがすごく、歩くのにも苦労したほどだ。そして、IC CARD WORLDの目玉である「FeliCa」と「おサイフケータイ」という観点でも、今年は大きな変化を感じさせるものだった。そこで今回の時事日想では、IC CARD WORLD 2010を振り返りながら、FeliCa / おサイフケータイのトレンドと今後について考えてみたいと思う。

FeliCa Lite と FeliCa Plug に注目が集まる

 これまでのFeliCa/おサイフケータイ市場は、Suicaを筆頭とする“交通IC”と、Edyやnanaco、WAONなど“電子マネー”の2分野が普及の両輪となって発展してきた。とりわけ2006〜2007年以降は、Suica型交通ICの全国規模での広がりと、電子マネーの共用型R/Wの普及が追い風になり、FeliCaを用いたサービスは一気に一般化した(参照記事)。今やFeliCaを用いたサービスは、都市部だけでなく地方郊外にも広く普及しており、ユーザー層も老若男女すべてに拡大した。FeliCaは生活や社会を支える重要なツールになったのである。

 誤解を恐れずに言えば、交通ICと電子マネーの普及はひとまず踊り場に達した。全国の主要な公共交通事業者はSuica型の交通ICを導入しており、電子マネーもナショナルチェーンを中心に全国の主要なコンビニ・スーパーなどで広く利用できるようになった。ここから先はさらに小規模事業者への展開ということになるが、交通ICと電子マネーの対応機器はそれなりの導入コストを必要とするので、そこに進むにはリーダー/ライターを始めとする機器の値下がりを待たねばならないだろう。

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