パナソニックの「まるごと事業」に秘められた甘い罠(1/2 ページ)

» 2010年03月24日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:中ノ森清訓(なかのもり・きよのり)

株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。


 パナソニックは、法人向け事業でグループの幅広い商品を一括納入し、保守まで請け負う「まるごと事業」を新たな収益源とする方針です。この度、まるごと事業のホテル向けでの第1弾として、阪急阪神ホテルズのホテル阪急インターナショナルの客室1室に、家電や照明・音量調節システムを導入したとの事です(出所:日本経済新聞2010年3月12日11面)。

 今回パナソニックが納入した製品は、パナソニック製の3Dテレビなど家電20品目以上、パナソニック電工の照明・音量調節システムなど多岐にわたります。

 パナソニックは、2009年末、太陽電池や業務用冷蔵庫を得意とする三洋電機を子会社化し、白物家電、AV機器のパナソニック、住設機器、照明技術のパナソニック電工と合わせ、グループでは空間設備に対する幅広い品揃えを確保できるようになりました。

 この強みを生かそうというのが、まるごと事業なのでしょう。同社の2010年の経営方針では「家・ビル まるごとソリューション」となっていましたが、ホテルやショッピングセンター、店舗などの商業空間にもターゲットは広がっているようです。

 パナソニックでは、産業用ロボットも手掛けていることから、このまるごとのターゲットは、病院や介護施設などの医療福祉分野、工場などの製造分野にもゆくゆくは広がっていくことでしょう。また、こうした取り組みが広がれば、設備メーカのもう1つの強みである、製品納入後の修理などの保守を競争なく取り込むことを生かして、かなり高い収益をあげられるでしょう。

 売り手企業として、パナソニックの戦略は間違っていません。いや、この戦略は非常に正しいものと絶賛されるべきものでしょう。顧客にしてみても、複数のグループ会社の異なる事業部門ごとの営業マンにバラバラ押しかけられるよりも、1人の営業マンに話をすればすべて持ってきてくれるということになれば、話は簡単になります。加えて、パナソニックも営業コストが削減できることから、それが製品・サービス価格に反映され、直接的なコストメリットも享受できるかもしれません。

       1|2 次のページへ

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.