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» 2010年02月03日 11時00分 UPDATE

上杉隆×小林弘人「ここまでしゃべっていいですか」(9):大手新聞の有料Web版への動きは、“正しい”ことなのか (1/3)

2010年春、日本経済新聞社は有料のWeb版をスタートさせる。しかしこうした動きは“正しい”ことなのだろうか。業界関係者の間からは「デジタルの世界で自殺するようなものだ」といった声も出ている。

[土肥義則,Business Media 誠]

 ジャーナリスト・上杉隆氏とインフォバーンの小林弘人CEOによる、対談連載9回目。2010年春、日本経済新聞社が有料のWeb版をスタートさせる(関連リンク)。また「他の大手新聞社も記事の課金化を始めるだろう」といった声も出ているが、有料化することで収益は向上するのだろうか。この問題について、小林氏が語った。

小林弘人(こばやし・ひろと)

1994年、インターネット文化を伝える雑誌『WIRED』日本版を創刊。1998年、株式会社インフォバーンを設立し、月刊『サイゾー』を創刊した。2006年には全米で著名なブログメディア『ギズモード』の日本版を立ち上げた。

現在、インフォバーンCEO。メディアプロデュースに携わる一方、大学や新聞社などに招かれ、講演やメディアへの寄稿をこなす。著書に『新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に』(バジリコ)のほか、『フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(日本放送出版協会)の監修を務めている。


負ければ消えていくしかない

yd_uesugi.jpg ジャーナリストの上杉隆氏

上杉 私は現在、テレビ、雑誌、Webで連載を持っています。あまりメディアにこだわらないのは、自分の性格が飽き性だから。で、とりあえずいろいろなところで仕事をして、居心地の良い場所を探しているうちにパンクしてしまう(笑)。ちなみに一番楽なのはテレビ出演や講演会で話すことなのですが、それだとアウトプットが多くなる。

 例えばテレビに出演していると、その間、情報収集することができません。2次、3次情報は入ってきますが、取材ができないので1次情報が入ってきません。ただテレビに出演しているとお金は入るし、相乗効果として講演依頼もよく来るようになる。でも、徐々に取材と話す中身が希薄になってしまう。ところが活字を中心に仕事をしていると取材に当てる時間が必然的に多くなります。例えば取材を100とすると、原稿の上に現れる情報は5ほど。残りの95はインプットされたまま、自分の肥やしになっている。なので活字中心の仕事をしていると、現在の環境では効率が悪い。

小林 なるほど。

上杉 私のケースでいうと、テレビ出演料や講演料は1本当たり5万円から30万円ほど。テレビや講演中心の仕事にするのは簡単だけど、まだ身体が動くのであえてしんどいメディアを選んでいます。将来的にはテレビの方で仕事を……とも考えていたのですが、記者クラブ問題で彼らにケンカを売ってしまったので、これはもう勝つしかない(笑)。勝てばメディアの世界で働くこともできますが、負ければ消えていくしかない。

 人生バクチではないが、この勝負に負ければかつてやっていたカラオケ屋の店長に戻ろうかな、とも思っています。ファミレスや居酒屋、ホテルで働いたこともあるのでそちらのサービス業の世界に戻ってもいいし、また政治家の秘書をやってもいい。マスコミにしがみつく気持ちは強くありません。だからこそ記者クラブ批判もできるのかなとも思っています。

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