大手新聞の有料Web版への動きは、“正しい”ことなのか上杉隆×小林弘人「ここまでしゃべっていいですか」(9)(2/3 ページ)

» 2010年02月03日 11時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

「その他大勢」では仕事はない

インフォバーンの小林弘人CEO

土肥(編集部) いわゆる出版不況が続いていて、雑誌の休刊が目立っています。今後、フリーのライターはどのように活躍していけばいいのでしょうか?

小林 例えば、フリーライターで活躍されている津田大介さんはWebメディアの立ち上げに関与したり、自身の知見をライティング以外にも活用しているように見受けられます。最近ではTwitterを駆使して脚光を浴びていますが、雑誌に依拠しているというよりも、津田大介氏は津田大介氏以外の何者でもない。ネットのように属人性が高まった世界では、名前と腕一本で勝負をかけるしかないでしょう。ネット上では専門的知識を有するアマチュアが多数いますから。単なる「その他大勢」に仕事が回るほど甘い世界ではないでしょうね。

 あと、アドバイスがあるとしたら、Web上に情報供給することは常に過剰生産されている品物にもう一品付け加えるようなものなので、常に“デフレ圧力”が働きます。だから、雑誌のようにそこに寄稿して稼ぐという構造が成り立ちにくい。ならば、勝負の場所を変えることで自身の価値を高めるしかないでしょう。Web上では名刺代わりに実力の片鱗を見せ、換金化はほかの場所で考えるとか……。自身の得意領域とセットで考えたほうがいいでしょう。

 ちなみに上杉さんはWebメディアで編集長になるおつもりはありませんか?

上杉 えっ、私? 実は人を使うのが苦手で……。

小林 米国では「The Huffington Post(ハッフィントンポスト)」という、Webメディアがリベラル派の間で注目されてきました。オバマ大統領が就任したときに、台頭してきたメディアでたちまち話題になっています。

 最初はブログ記事を選んで集めていたのですが、最近ではオリジナル記事も掲載していて、かなり読まれていますね。いまはFacebookと連動して、ソーシャルメディア系に広く浸透しています。今後、日本でもこの類の独自メディアは、コンテンツ課金化を考えている主要新聞を尻目に躍進する余地があると思います。

 僕は2006年に「Gizmodo」という会社と提携し、「Gizmodo Japan」を立ち上げました。デジタル系ガジェットの情報を掲載していて、いまは月間1500万ページビュー以上あります。ヘタな週刊誌より、よく読まれていますね。また昨年くらいから、企業の方もそれに気づき始めて「弊社の製品を紹介してください」といった問い合わせがたくさんくるようになりました。

 日本でもハッフィントンポストのようなブログのシステムを駆使した一般的なニュースメディアはこれからがチャンスだと思うのですが……。

上杉 それじゃあ……ハッフィントンポスト・ジャパンを作りましょうかね。単純すぎるか(笑)。

小林 “上杉ポスト”ですね(笑)。

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